刑事収容施設収容者へのワクチン接種の現状および技能実習生を取り巻く課題解決に向けて質疑 ~参議院法務委員会~
3月16日、参議院法務委員会で刑務所や社会復帰促進施設に収容されている方のワクチン接種の現状を指摘するとともに、技能実習生を取り巻く課題への対応について古川法務大臣の認識を問いました。

【刑務所等に収容されている者のワクチン接種の現状】
刑務所等の施設に収容されいている者への新型コロナウイルスワクチン接種の条件は、接種券を差し入れられた者とされている。ワクチン接種の状況は2022年1月末現在収容者44,459人に対して2回目の接種を終えた者は24,963人、接種率は56.1%に留まっている。また、仮釈放や満期出所が近い者は、接種券が差し入れられても釈放後の接種を指示されている。このような現状から刑事収容施設で複数のクラスターが発生しているばかりか、出所後直後に新型コロナウイルスに罹患するケースも散見されている。また刑務官やその家族が感染リスクにさらされている現状を指摘して、法務大臣の認識を問いました。
大臣は「そのような事例があったということは承知していなかった。素直に受け止めて反省すべきと思っている。それぞれの施設において自治体と調整を緻密に進めるよう改めて指示する」と応じました。

【技能実習生を取り巻く課題解決に向けて】
厚生労働省が2020年に監督指導した実習先企業は約5,700事業所あった。これは実習先企業の70%が労働基準法違反や労働安全衛生法に違反していることになり、技能実習制度自体に問題があることが疑わられる事態となっている。
違反事案は、賃金の未払い並びに違法残業の横行が多く指摘されているが、監理団体による賃金台帳やタイムカードなどの確認が不十分ということが起因していると思われる。
監理団体を指導監督する外国人技能実習機構の検査については、細かく帳簿をチェックする担当者もいる一方で、監理団体の説明を聞くだけで終わる担当者がいるとの指摘も出ている。
外国人労働者が民間の相談窓口に伝えた事例では、基本給が45,000円程度で手当として80,000円程を付けて外形的には最低賃を上回る賃金となっている。しかし、時間外労働を行った際の残業代は基本給で計算されることから300円位になってしまう実態がある。技能実習に名を借りて安価な労働力を受け入れる企業があると同時に、そのような企業があるにもかかわらず、技能実習計画は認定されているわけであり、技能実施計画の認定自体に問題があることを指摘。
また、母国の送り出し機関に多額の借金を負わされて日本に来ているが、この借金の返済の見通しが立たず逃亡・失踪に至るケースがある。こうした一連の技能実習制度をアメリカの国務省は借金に基づく強制労働だと指摘しており、国内外から非常に批判を浴びている制度であることを重く受け止めなければならない。ヨーロッパなどでは企業に対して自分の会社だけではなくサプライチェーン全体を対象とした調査や対策をする動きが広がっている。日本も外国人労働者の人権をしっかり守る仕組みを整備していかないとグローバル市場から排除される恐れがあることを指摘。
技能実習生が母国で借金を背負わされて実質強制労働のような形で、日本で仕事に従事しなければならない問題を根本的に解決していくための議論を優先順位の高い課題として取り扱うよう要請し、大臣の認識を問いました。
大臣は「送り出し機関の不当な借金については非常に問題視しており、相手国とも取り組みを進めその結果として受け入れの取り消しも含め対応している。しかし、これで問題がすべて解決するとは思っていない。特定技能制度および技能実習制度の見直し時期を迎えている。この機を捉えて虚心坦懐に内外からの意見をしっかりと幅広く耳を傾けて、あるべき姿を追求していく。」と応じました。

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