厚労省へUAゼンセン重点政策要請書を手交「新しい生活様式」の中、ワーク・ライフ・バランスを実現し能力を発揮できる社会の実現に向けて!
7月20日、UAゼンセンは、新型コロナウイルスの第2波、第3波を警戒し、感染予防と経済再生を目指しながら、雇用の維持と生活の下支えをしつつ、働く者が新しい働き方とともに新しい暮らし方を定着させ、誰もが自らのワーク・ライフ・バランスを実現し能力を発揮できるよう、働き方改革により労働参加率を高めるとともに、人への投資を強化し生産性を高めていくこと等が必要であるとの考え方を基に、「2021年度UAゼンセン 重点政策」の要請書を作成し、厚生労働省へ提出しました。
私からは、要請が早期に実現されるよう、検討し尽力願いたい旨を伝えました。

要請事項(抄)
①安全衛生活動の強化
 10人以上の事業場で安全委員会や衛生委員会の設置を義務付ける。また、企業単位として安全衛生委員会等の設置や産業医の選任を義務付ける。安全委員会等の設置にあたっては、派遣労働者も派遣先企業の労働者としてカウントされ、委員として安全委員会等に参加できることを周知・徹底する。さらに、50人以上の事業場に安全衛生管理活動計画の作成と労基署への届け出を義務付ける。また、安全衛生優良企業認定の促進を図る。
 定期健康診断およびストレスチェックの対象となる常時使用する労働者の対象を週所定労働時間20時間以上の労働者に拡大する。高齢者や外国人労働者、派遣労働者の増加を踏まえ、特に中小企業において実効性のある安全教育の徹底と地域産業保健センターとの連携強化などの健康確保に対する取り組みを支援する。
 マスク、消毒薬等、感染症対策に必要な備品については、派遣労働者(特に医療事務)にも適切に供給するよう指導を強化する。また、リモートワークの増加を踏まえ、リモートワーク特有の労働安全衛生上の課題の検討を深め、対策を強化する。
②悪質クレーム(迷惑行為)対策の促進
 「サービス等を提供する側と受け取る側ともに尊重される消費社会」の実現をめざし、一部の消費者による一般常識を超えた不当な要求や異常な態様の要求行為等の悪質クレームの抑止・撲滅を推進する。
国全体として悪質クレーム対策を進めていくための基本法、ならびに事業主に悪質クレームから労働者を守るための措置を義務付ける法律の制定を行う。加えて、業界ごとに悪質クレームの実態調査と対策の研究を行い、悪質クレームの対応や従業員教育の実施に向けたマニュアル、ガイドラインを作成する。
 さらに、ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメント」を禁止するための条約の国内批准が可能となるように法整備を進める。
③ポストコロナ、人口減少、高齢化の進展を踏まえた労働時間・休み方の抜本改革
 労働参加を増やすとともに、より長期に働くことができるよう、健康と安全、ワーク・ライフ・バランスに配慮した労働時間・休み方の抜本改革を行う。
・時間外労働上限360時間の義務化⇒休日労働ならびに月45時間を超えた時間外労働の割増率を50%に引き上げる。
・24時間につき11時間の休息時間付与を義務化する。
・年休付与日数の最低日数を年20日に引き上げるとともに最低2週間の連続休暇所得を義務化する。なお、年次有給休暇を取得したときの賃金は、原則、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とする。
・年10日程度の病気有給休暇付与を法制化する。
・深夜労働、交代労働、日祝日労働の調査を行い、必要な対策を行う。
・有給の教育訓練の普及促進をはかる。
・自然災害被災時、交通機関の運休や家屋の復旧等で労働者が出勤できない場合の賃金の取り扱いを調査し、必要に応じて賃金を補償するしくみを検討する。
・トラック、バス、タクシー運転者の長時間労働を是正し、その実効性を高めるため、改善基準告示順守をさらに徹底する。
④能力開発の抜本強化
 労働者個々人に対し、一定時間の職業訓練を受講できる権利を保障するとともに、在職中の能力開発に対しる助成措置を抜本的に強化する。リモートワークが増えている現状を踏まえ、オンラインで実施できる教育訓練メニューの開発普及促進を強化する。
⑤AIの活用に向けた対応の促進
 AI等の革新的デジタル技術が持続的包摂的な経済発展につながるよう、導入に向けた政労使の検討の場を設ける。中央、地方、産業業種ごとに「人間中心のAI等活用促進会議(仮称)」等の検討の場を設け、その中で以下の点等を検討する。
・AI等の革新的デジタル技術導入に向けた労使協議の促進
・AI等の革新的デジタル技術のための教育訓練の促進
・人事労務管理におけるAI等の革新的デジタル技術導入のガイドライン
⑥65歳定年制の法制化
 法定の定年年齢を65歳以上とするよう具体的な検討を行う。
⑦兼業者に対する保護の強化
 兼業者については、複数の使用者のもとで労働時間を通算し、労働法、社会保険等を適用するよう法整備する。事業主が違っても通算することを徹底し、把握のためのルール整備やツール開発を早急に行う。通算することで健康診断やストレスチェック等が適切に実施されるよう整備する。
 適用にあたって労働時間要件に加えて賃金要件がある労働保険・社会保険については、賃金も通算できるよう整備する。
 労働時間、賃金を通算するツールとして、マイナンバーの活用を早急に検討する。また、企業が賃金・労働時間を通算する仕組みを導入した場合に必要な経費の一部を助成する制度を新設する。
⑧外国人労働者の受け入れ体制の整備
 外国人労働者を受け入れる際には、受け入れ企業に労働法令を順守させるための体制強化を行うとともに、外国人労働者が集団的労使関係のもとでの労働条件について使用者と対等の交渉ができるよう支援を強化する。
 在留資格「特定技能」については、労働者の意見を聴く場として、分野別協議会の構成員に労働組合を加える。
 また、就業規則や労働協約、組合規約等を外国語に翻訳する費用や平易な日本語に変更する費用、外国人労働者の労災防止のために視聴覚に訴える器材の作成費用、外国人労働者が有給休暇等を取得して一時帰国するための費用を助成する。
⑨障がい者の就労支援
 「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を継続し、「サポーター意思表示グッズ」の着用や事業場で掲示できる器材作成などを通じて、精神障がい者等の就労に対する顧客、取引先等の理解を深める啓発活動を強化する。
 また、重度障がい者に対し、通勤時間や自宅・職場での就労時における身体的介護費用等の公的支援を強化する。
⑩労働協約の地域的拡張適用の促進
 労働協約の地域的拡張適用の要件を緩和し、協約拡張適用を促進する。労組法第18条の「労働者の大部分」につていは、半数以上とし、協約締結者が異なる場合でも実質的に同一内容の場合は、「一の労働協約」として取り扱うこととする。
⑪中小企業退職金共済制度の促進
 中小企業退職金共済制度の加入条件を業種にかかわらず従業員300人以下、資本金3億円以下とし、加入後300人を超えても一定規模までは継続加入できるようにする。新規加入に際しての掛け金については、国や自治体の助成を拡充する。
⑫派遣労働者の過半数代表者選出の適正化、団体交渉の促進
 派遣元事業主の通常の労働者と派遣労働者の双方の意見が反映されるように、派遣元事業所における過半数代表者選出の適正化を進める。
 また、判例等を踏まえ、労働者派遣における派遣先・派遣元の団体交渉応諾義務をわかりやすく示したガイドラインを作成する。
⑬派遣契約、業務請負契約、業務委託契約等の医療事務従事者の感染防止、雇用維持
 感染症対策としてのマスクや消毒薬について、派遣契約、業務請負契約、業務委託契約等に医療事務従事者にも適切に供給するよう指導を強化すること
 また、コロナ禍において、医療機関等における当該諸契約内容の一方的な変更や解除の防止に向けた対策を講じること
⑭社会保険制度の適用拡大
 社会保険の適用拡大にあたっては、「すべての被用者に被用者保険が適用される」との原則に基づきさらなる拡大を進める。
 2017年に始まった適用拡大の際には、労働時間を短縮した労働者は少なからず存在したことから、500人以下の中小企業にも順次導入されることを踏まえ、制度内容や趣旨の周知を強化し、確実な適用を進める。
 また、企業負担分の社会保険料納付については、労働保険の納付方式を参考に、全従業員への給与支払総額の一定率の保険料を賦課する方式への転換等を含め、早急に、就労抑制につながらない制度を構築する。
 なお、キャリアアップ助成金(選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コース)については、支給申請上限人数を設けず条件にあてはまる実人数を対象とする。
⑮介護制度の充実に向けた対策の強化
 介護人材確保のために、介護報酬の引き上げ等を行うとともに、ICT化の推進と事務作業の簡素化等を推進する。
 また、介護労働のネガティブなイメージを払拭するために、介護労働の魅力について行政・事業者・関係団体等と協働して広報活動を行う。さらに、介護業界への入職促進のために、公的介護職職業訓練の拡充、潜在労働力の掘り起こし等を行う。
 将来的に、介護保険制度の加入範囲を拡大する。具体的には、介護保険の被保険者・受給者の範囲を、18歳未満を除く全ての医療保険加入者とする。
⑯地域共生社会の実現と人材育成の強化
 真の地域共生社会の実現に向け、国や自治体等が責任をもって行うべき事項とその範囲を明確にする。また、専門職(コミュニティソーシャルワーカー等)の育成・支援を行う。
⑰ノロウイルス等の感染症対策の強化
 国民に対し、ノロウイルスによる感染症に関する知識等の啓発を強力に推進する。あわせてノロウイルスワクチンの開発を促進する。