民法の一部を改正する法律案(離婚後の共同親権・法定養育費制度の導入)~参議院本会議~
4月19日、参議院本会議で国民民主党・新緑風会を代表して離婚後の父母双方が親権を持つ共同親権の導入などを柱とする民法等の改正法案に対して、「こどもの利益とは」などについて小泉法務大臣に質疑を行いました。
本改正法案は、離婚後に父と母のどちらか一方が子どもの親権を持つ現行法の「単独親権」に加えて、父と母双方に親権を認める「共同親権」を導入し、父母の協議によって共同親権か単独親権かを決め、合意できない場合は家庭裁判所が親子の関係などを考慮して親権者を定める。ただし、裁判所がドメスティック・バイオレンス(DV)や子どもへの虐待があると認めた場合は、単独親権を維持するとされています。また、養育費について支払いが滞った場合は、優先的に財産の差し押えを可能とするほか、事前の取り決めができない場合にも、一定額を請求できる「法定養育費制度」を導入するとされています。
本法案を巡っては、反対派・賛成派で鋭く意見が対立しています。それぞれが深刻なDV被害や子どもの連れ去りなどの深刻な事情を抱えており、法改正に合わせて双方の事情に寄り添った具体的な対策を速やかに講じる必要があります。その上で親の権利を示す「親権」の在り方を通じて「子の権利」を論じるのではなく、子の権利保護の議論が真に最優先されるべきと考えます。
質疑では、子どもの権利という点に主眼を置き質問しました。
〇子の利益の定義は何か?
今回の民法改正法案でも、条文案の各所に「子の権利」という文言が見られます。
現行民法第766条でも親子の交流に関して「子の利益を最優先して考慮」することが規定されていますが、現実には司法は親子の断絶や交流制限を容認しています。その一方で、父母以外の親族と子との交流を制度化する民法第766条の2は、第三者に申立権を付与することへの懸念の声も寄せられています。こうした意見を踏まえると法改正後は、「子の利益」に対する司法の恣意的解釈が介在しない運用が不可欠となります。今次法改正以降、「子の利益」とは何を指すのか、また「子の利益」に対する司法の恣意的解釈を防ぐためには、「子の権利」の要件を明文化すべきと指摘し小泉法務大臣の認識を問いました。
大臣は、子の利益の定義については「その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達が図られることが子の利益であると考える。また、父母の別居後や離婚後においても父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益にとって重要」、子の権利要件の明文化については「本改正案は子の養育に関する親の責務等に関する規定を新設しており、これは父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益にとって重要であるとの理念に基づくものである。本改正案が成立した際には、本改正の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知広報に努めてまいる」と応じました。
〇離婚時に共同養育計画作成の義務化することの必要性
現在の日本の養育費受領率は30%弱であることから、これまで離婚後の養育費の未払い問題が指摘されています。しかし、そもそも離婚時の養育費と面会交流の取り決め率自体が、それぞれ46.7%、30.3%と、低水準に留まっています。
一方、離婚時に養育費や面会交流に関する取り決めをしっかり行っている世帯での養育費受領率は、取り決めを行っていない世帯を大幅に上回っています。
これらの事実からは、離婚時に養育費負担や面会交流を含む共同養育計画作成を義務化することが、「子の利益」を保護する上で有効と指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は「本改正案では、養育計画の作成を必須とはしていないが、離婚時に父母が協議に養育計画を作成できることを明らかにするため、離婚時に父母の協議により定める事項として監護の分掌を追加している」と応じました。
〇D V被害者を守るための体制の充実
DV被害者を守るため、警察や配偶者暴力相談支援センターなどがDV被害者の救済などに関する業務を行っているほか、DV被害者が一時的に身を隠せる施設として民間団体がDVシェルターを設置しています。一方、裁判所の体制面や民間に依存した避難体制など、DV被害者の支援体制が極めて脆弱です。今後、国費を投じてDVシェルターを整備することを始めとしたDV被害者の保護、支援体制を速やかに整備・充実させる必要があると訴え、大臣の認識を問いました。
大臣は「本法案が成立した際には、その円滑な施行に必要な環境整備についてDVの防止も含め関係省庁等としっかり連携して取り組んでまいる」と応じました。
〇単独親権者決定にあたっての具体的な判断基準とは?
単独親権者となる判断基準には、「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力、その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無・・・」とあります。
しかし、夫婦関係が破綻している場合、そもそも顔を合わせること自体が心身へのストレスと考えられることから「おそれ」という曖昧な判断基準のままでは、一方の当事者の主張のみが採用される可能性が否定できないと指摘し、単独親権者決定にあたっての具体的な判断基準とは何かを問いました。
大臣は「この「おそれ」については、個別的、具体的な事案において、当事者双方の主張、立証を踏まえ、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて適切に判断されるものと考える」と述べました。
〇共同親権が認定された後に別途監護者を選定できる運用とする理由および監護者の選定要件は?
今回の法案では、共同親権となっても別途監護者を選定できる運用となっていますが、この場合、監護者は身上監護権を単独で行使することになります。面会交流すら十分に実施されていないケースでは、むしろ紛争が深刻化する恐れがあることを指摘する声もあります。一般的な共同親権導入国では、親権と監護権を分ける運用にはなっていないことから、本法案で親権と監護権を切り分けた理由。また子を監護すべき者(監護者)の指定」にあたっての選定要件については、当事者が納得できる裁定を裁判所が行う上で明文化すべきと指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は、別途監護者を選定できる運用については「離婚した父母の双方が親権者と定めた場合に、父母が子の身上監護をどのように分担するかはそれぞれの事情により異なる。具体的な事情に関わらず監護者の定めを一律に禁止することは相当ではなく、本改正案では親権者の定めとは別に監護者の定めをすることができる」、監護者の具体的な要件については「現行民法では、監護者の定めを判断するにあたって子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされており、このことは本改正案においても同様」、監護者要件の明文化については「具体的にどのような場合に監護者の定めが必要となるか等はそれぞれの事情によって異なるため、その要件を一義的に規定することは困難」と応じました。
〇「子の監護の分掌」割合に関するガイドラインを作成する必要性
一般的に共同親権が採用されている国では、児童心理研究などのエビデンスに基づいて養育スケジュールを作成し、これに基づき共同監護のスケジュールを決定しています。日本でも「監護の分掌」を導入するにあたり、公平性を担保しつつ「監護の分掌(養育時間の分担)」が決められるよう、児童心理研究などのエビデンスに基づくガイドラインを作成すべきと指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は「心理学の専門家の協力も得て養育計画の作成に関する調査研究の実施を検討しており、こうした取り組みも通じて具体的な事例を示したい」と応じました。
〇養育費請求に関する弁護士の成功報酬は、公序良俗の観点から見直すべき
日本では弁護士に依頼して養育費請求の裁判や調停を行った場合、その成功報酬は取り決め金額の10~20%程度とされていますが、離婚などの家事事件での成功報酬は、公序良俗に反するという理由で制限または禁止している国が少なくありません。
養育費請求に関する成功報酬については、禁止も視野に見直す必要があると訴え、大臣の認識を問いました。
大臣は「弁護士と依頼者との間の個別の契約で合意されるものと理解している。その契約の内容の当否については、個別の事案における具体的な事情に即して判断されるべき」と述べました。
本改正法案は、離婚後に父と母のどちらか一方が子どもの親権を持つ現行法の「単独親権」に加えて、父と母双方に親権を認める「共同親権」を導入し、父母の協議によって共同親権か単独親権かを決め、合意できない場合は家庭裁判所が親子の関係などを考慮して親権者を定める。ただし、裁判所がドメスティック・バイオレンス(DV)や子どもへの虐待があると認めた場合は、単独親権を維持するとされています。また、養育費について支払いが滞った場合は、優先的に財産の差し押えを可能とするほか、事前の取り決めができない場合にも、一定額を請求できる「法定養育費制度」を導入するとされています。
本法案を巡っては、反対派・賛成派で鋭く意見が対立しています。それぞれが深刻なDV被害や子どもの連れ去りなどの深刻な事情を抱えており、法改正に合わせて双方の事情に寄り添った具体的な対策を速やかに講じる必要があります。その上で親の権利を示す「親権」の在り方を通じて「子の権利」を論じるのではなく、子の権利保護の議論が真に最優先されるべきと考えます。
質疑では、子どもの権利という点に主眼を置き質問しました。
〇子の利益の定義は何か?
今回の民法改正法案でも、条文案の各所に「子の権利」という文言が見られます。
現行民法第766条でも親子の交流に関して「子の利益を最優先して考慮」することが規定されていますが、現実には司法は親子の断絶や交流制限を容認しています。その一方で、父母以外の親族と子との交流を制度化する民法第766条の2は、第三者に申立権を付与することへの懸念の声も寄せられています。こうした意見を踏まえると法改正後は、「子の利益」に対する司法の恣意的解釈が介在しない運用が不可欠となります。今次法改正以降、「子の利益」とは何を指すのか、また「子の利益」に対する司法の恣意的解釈を防ぐためには、「子の権利」の要件を明文化すべきと指摘し小泉法務大臣の認識を問いました。
大臣は、子の利益の定義については「その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達が図られることが子の利益であると考える。また、父母の別居後や離婚後においても父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益にとって重要」、子の権利要件の明文化については「本改正案は子の養育に関する親の責務等に関する規定を新設しており、これは父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益にとって重要であるとの理念に基づくものである。本改正案が成立した際には、本改正の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知広報に努めてまいる」と応じました。
〇離婚時に共同養育計画作成の義務化することの必要性
現在の日本の養育費受領率は30%弱であることから、これまで離婚後の養育費の未払い問題が指摘されています。しかし、そもそも離婚時の養育費と面会交流の取り決め率自体が、それぞれ46.7%、30.3%と、低水準に留まっています。
一方、離婚時に養育費や面会交流に関する取り決めをしっかり行っている世帯での養育費受領率は、取り決めを行っていない世帯を大幅に上回っています。
これらの事実からは、離婚時に養育費負担や面会交流を含む共同養育計画作成を義務化することが、「子の利益」を保護する上で有効と指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は「本改正案では、養育計画の作成を必須とはしていないが、離婚時に父母が協議に養育計画を作成できることを明らかにするため、離婚時に父母の協議により定める事項として監護の分掌を追加している」と応じました。
〇D V被害者を守るための体制の充実
DV被害者を守るため、警察や配偶者暴力相談支援センターなどがDV被害者の救済などに関する業務を行っているほか、DV被害者が一時的に身を隠せる施設として民間団体がDVシェルターを設置しています。一方、裁判所の体制面や民間に依存した避難体制など、DV被害者の支援体制が極めて脆弱です。今後、国費を投じてDVシェルターを整備することを始めとしたDV被害者の保護、支援体制を速やかに整備・充実させる必要があると訴え、大臣の認識を問いました。
大臣は「本法案が成立した際には、その円滑な施行に必要な環境整備についてDVの防止も含め関係省庁等としっかり連携して取り組んでまいる」と応じました。
〇単独親権者決定にあたっての具体的な判断基準とは?
単独親権者となる判断基準には、「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力、その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無・・・」とあります。
しかし、夫婦関係が破綻している場合、そもそも顔を合わせること自体が心身へのストレスと考えられることから「おそれ」という曖昧な判断基準のままでは、一方の当事者の主張のみが採用される可能性が否定できないと指摘し、単独親権者決定にあたっての具体的な判断基準とは何かを問いました。
大臣は「この「おそれ」については、個別的、具体的な事案において、当事者双方の主張、立証を踏まえ、それを基礎づける方向の事実とそれを否定する方向の事実とが総合的に考慮されて適切に判断されるものと考える」と述べました。
〇共同親権が認定された後に別途監護者を選定できる運用とする理由および監護者の選定要件は?
今回の法案では、共同親権となっても別途監護者を選定できる運用となっていますが、この場合、監護者は身上監護権を単独で行使することになります。面会交流すら十分に実施されていないケースでは、むしろ紛争が深刻化する恐れがあることを指摘する声もあります。一般的な共同親権導入国では、親権と監護権を分ける運用にはなっていないことから、本法案で親権と監護権を切り分けた理由。また子を監護すべき者(監護者)の指定」にあたっての選定要件については、当事者が納得できる裁定を裁判所が行う上で明文化すべきと指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は、別途監護者を選定できる運用については「離婚した父母の双方が親権者と定めた場合に、父母が子の身上監護をどのように分担するかはそれぞれの事情により異なる。具体的な事情に関わらず監護者の定めを一律に禁止することは相当ではなく、本改正案では親権者の定めとは別に監護者の定めをすることができる」、監護者の具体的な要件については「現行民法では、監護者の定めを判断するにあたって子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされており、このことは本改正案においても同様」、監護者要件の明文化については「具体的にどのような場合に監護者の定めが必要となるか等はそれぞれの事情によって異なるため、その要件を一義的に規定することは困難」と応じました。
〇「子の監護の分掌」割合に関するガイドラインを作成する必要性
一般的に共同親権が採用されている国では、児童心理研究などのエビデンスに基づいて養育スケジュールを作成し、これに基づき共同監護のスケジュールを決定しています。日本でも「監護の分掌」を導入するにあたり、公平性を担保しつつ「監護の分掌(養育時間の分担)」が決められるよう、児童心理研究などのエビデンスに基づくガイドラインを作成すべきと指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は「心理学の専門家の協力も得て養育計画の作成に関する調査研究の実施を検討しており、こうした取り組みも通じて具体的な事例を示したい」と応じました。
〇養育費請求に関する弁護士の成功報酬は、公序良俗の観点から見直すべき
日本では弁護士に依頼して養育費請求の裁判や調停を行った場合、その成功報酬は取り決め金額の10~20%程度とされていますが、離婚などの家事事件での成功報酬は、公序良俗に反するという理由で制限または禁止している国が少なくありません。
養育費請求に関する成功報酬については、禁止も視野に見直す必要があると訴え、大臣の認識を問いました。
大臣は「弁護士と依頼者との間の個別の契約で合意されるものと理解している。その契約の内容の当否については、個別の事案における具体的な事情に即して判断されるべき」と述べました。