緊急事態に備えた「参議院緊急集会」の制度整備を提起 ~参議院憲法審査会~
4月16日、参議院憲法審査会において、緊急事態時に国政運営の空白を回避するための「参議院緊急集会」の在り方について意見を述べました。憲法制定から79年が経過する中で、自然災害や感染症の拡大など、現代社会において想定される非常時に対応するためには、緊急集会の権能や開催判断の基準について、より明確な整理が求められます。とりわけ、衆議院が存在しない、または機能しない状況下においては、参議院が国会の権能を代行する正当性をどのように担保するかが重要です。過去に開催された2度の緊急集会(昭和27年・28年)の経緯を振り返りながら、制度の実効性と正統性を高めるための検証が必要であると指摘し、今後の制度設計の議論を深めていくよう提起しました。

【全文】
国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
本日は、有事の際に国政に遅滞を生じさせないために緊急集会という制度を有効活用するという観点から、今後検証すべき課題について意見を申し述べます。
参議院の緊急集会は、憲法制定から既に79年が経過し、その間に公布された多くの法律が緊急時の暫定措置を法律による委任によって法的根拠を求めることを想定していない現状を踏まえれば、今後想定され得る自然災害や感染症のパンデミックなど、社会経済活動に甚大な影響を及ぼす事態が生じた際、国政運営に遅滞を生じさせないよう、ちゅうちょなく緊急集会を開催できるよう、現代における緊急集会の権能、そして緊急集会を開催すべき緊急事態の判断基準を整理する必要があるものと考えます。
緊急集会の権能は国会の権能全般に及ぶとされる一方、案件の性質から、参議院の単独の議決のみでは許されないものや緊急の必要性がないものはその権能の対象外と解されていることに関連し、憲法改正の発議、内閣総理大臣の指名、内閣不信任決議、条約締結の承認、両院同意案件等について権能の対象外となるのかどうか、対象外とした場合に例外が認められるかどうかなどをめぐり議論の余地があるものと考えます。
しかし、法の趣旨を鑑みれば、衆議院が存在しない場合、あるいは衆議院が有効に機能しない場合は、参議院一院をもって国会の権能を代行している状況であることから、その目的に適合する範囲において緊急集会の権能に制約はないとみなすことが合理的と考えております。
ただし、緊急集会の正統性を担保するためには、衆議院が発足するまでの間にその有効性を限定することが望ましいほか、衆議院発足後は再審議を義務付けるなどの手続を定めることも必要と考えております。
緊急集会の開催については、緊急集会の開催に迫られる緊急事態が発生するタイミングによって整理することが合理的と考えております。緊急事態発生のタイミングが衆議院の解散から選挙の告示日までの間に生じたのであれば、選挙の中止及びそれに伴う全議員の身分復活及び任期延長の可否が問われることとなり、ここに現在検討している緊急事態条項の内容の意義があるものと考えております。
その上で、選挙中止、全議員の身分復活、任期延長がなし得ない事態が生じた際、参議院の緊急集会が意味を持つことになるものと捉えております。
最後に、緊急集会の開催すべき緊急の事態を判断する上で必要との認識に立ちまして、緊急集会の先例について質問をいたします。
緊急集会の先例は二度あり、昭和27年は最高裁裁判官国民審査執行のための中央選挙管理委員会の指名のためのものであり、昭和28年は暫定予算等の議決のためにそれぞれ開催されていますが、この開催理由が参議院緊急集会という異例中の異例の制度を運用するに足る事案であったか否かについて検証を行うことは、今後の緊急集会開催の判断を行う上で必要と考えております。
そこで、当時、参議院緊急集会を開催した背景に一体何があったのか、憲法審査会事務局長に説明を求めて、私の発言を終わります。

○憲法審査会事務局長
緊急集会は、昭和27年及び昭和28年に実例がございます。
昭和27年の緊急集会につきましては、与党内の対立を解消するためと言われているいわゆる抜き打ち解散により、衆議院議員総選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査を執行するための中央選挙管理会委員の指名をしないまま衆議院が解散されたことから、その指名のために開催されたところでございます。
昭和28年の緊急集会につきましては、吉田茂内閣総理大臣の衆議院予算委員会における不規則発言を契機に提出された内閣不信任案の可決によるいわゆるばかやろう解散として3月14日に衆議院が解散されたことにより、昭和28年度予算の年度内不成立が確実になったことから、暫定予算及び法律案4件の議決のために開催されたところでございます。