譲渡担保法制の整備に質疑~参議院法務委員会~
5月29日、参議院法務委員会において、「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案」およびその関連整備法案の審議が行われ、私は国民民主党を代表して、労働債権の保護と制度の実効性確保の観点から質疑を行いました。
本法案は、これまで法律上の明確な規定がなかった「譲渡担保」について、その内容や効力を初めて体系的に定めるものです。譲渡担保とは、企業が融資を受ける際、機械設備や在庫商品といった動産や、売掛債権などを一時的に債権者へ譲り渡す形式で担保とする制度です。返済が完了すれば担保は元の所有者に戻されることが通常で、実務上広く使われてきましたが、法律に基づく明確なルールがなかったため、権利関係の不明確さや債権者間の優劣争いなどが生じることが課題となっていました。

質疑では、昨年成立した「事業性融資の推進等に関する法律」における「企業価値担保権」との整合性について確認しました。この法律では、企業の価値全体を担保に取るという新たな考え方に基づき、裁判所の監督下での手続を義務付けることで、労働者の雇用維持や労働債権の優先的な保護が図られています。
これに対し、譲渡担保制度でも同様の保護が確保されるのかを政府に確認し、譲渡担保が集合的に財産を押さえる性質を持つことを踏まえ、債務者が倒産した場合には一定の基準を超える担保財産について破産財団へ組み入れる「組入れ義務」を定めることで、他の債権者や労働債権者の利益を保護する仕組みが盛り込まれていることが明らかになりました。
私は、事業価値担保権と譲渡担保権は形態こそ異なるものの、結果として債権者が企業の価値に着目して融資を行う点では共通していると考えており、適用される制度によって労働債権や雇用の保護に差が生じるようなことがあってはならないと指摘しました。
さらに、譲渡担保に関する登記制度の運用についても確認しました。現在、譲渡担保の登記は東京法務局の一か所でしか受け付けられておらず、地方からの手続が煩雑であるとの声が司法書士会などから上がっています。不動産登記が全国の登記所で可能であるのと対照的に、地方の事業者にとっては使い勝手の悪い制度になっていると指摘し、法務大臣の認識を問いました。
大臣は、「登記を一元管理することで先後関係が明確になり、実務上の利点がある」と述べたうえで、「地方の利便性確保も重要である」との認識を示しました。あわせて、登記のオンライン申請の推進や、利用状況を踏まえた将来的な法務局の指定拡大についても「費用対効果や運用コストを考慮しつつ、検討すべき課題」と語りました。

※本法案は5月30日、国民民主党をはじめ全会一致で成立しました。