DV被害者およびDV被害支援者の懸念への対応を求める(共同親権および法廷養育費等の導入に向けた民法改正案)~参議院法務委員会
5月9日、法務委員会で共同親権および法定養育費等の導入に向けた民法改正案に対し、DV被害者やDV被害者を支援されている方々が懸念をされていることを訴えるとともに、政府に対応を求めました。

共同親権の在り方を議論するにあたって、離婚の95%以上の方が協議離婚若しくは調停離婚をされています。このことから最優先に対応すべきはDVから逃げている方の身の安全をどう守るかと同時に、子の連れ去りによって大変な痛手を負っている方々に対してこの改正法が適切に対応できるかが問われています。1985年に男女雇用機会均等法が施行され、それ以前とそれ以降とではかなり意識が変わってきているのが今の社会情勢であり、最近の40歳代未満の若い方々は、育児に対する夫婦の参画も進みつつあり、子は母が面倒を見るものというステレオタイプの考え方が徐々に変わってきていることを指摘しました。
その上で、共同親権となった場合、DV被害者にとっては、居所の指定や親権行使にあたって別居親の同意が求められます。例えば住民票の支援措置を受けて安心して暮らしている方にとっては別居親に住所が知られて押しかけられてしまい、結果として子どもの連れ去りが起こってしまうとの懸念の声があります。この懸念に対応するために、別居親が悪意を持って諸手続きに拒否権を発動するリーガルハラスメントやパスポートを取れないなどを含め、子どもの日常生活への悪影響を回避するための判断基準(考慮要素)を明確化すべきと指摘。考慮要素が全くない状態で裁判所の判断に委ねてしまうことになると、当事者双方が不満を持つことになってしまい裁判所の信頼が失われてしまう。法律を改正して運用していく上でどういう基準に基づいて物事を判断していくのかを一定部分明示し、それを参考に司法が裁定を行うべきと強く訴えました。
また裁判所の裁定により親子交流が認められた場合でも長年にわたり拒否されるなど裁判所の裁定に従わない事例に対しては、一定の強制力を持たせ実効性が担保されるよう速やかに検討を行うべきと訴え、小泉法務大臣の認識を問いました。
大臣は「これを契機として問題意識をしっかり持って対応を検討したい」と応じました。

DV被害者の状況が急迫かどうかをめぐって、支援者の方が逃げることをアドバイスした場合に後々争いが生じることを恐れて、支援に対する萎縮が起こるとの声があります。法改正後もDV被害者支援のため急迫の事情があることをもって支援に取り組むことにより、裁判等を提起され不利益が生じることのないよう、急迫の事情に該当する事柄を予め明示するよう訴えました。

単独親権が共同親権に変更された場合、別居親の収入如何によって高校就学支援金が受けられなくなる可能性があるとの指摘があります。別居親が養育費を支払っていれば理論上理解はするものの、養育費を払わなかった場合、共同親権になって見た目の収入だけ増えたことで支援制度を受けられなく可能性が生じることを指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は「法務省が主導して全体の関係省庁と連携を深め、法が施行されるまでの間に不利益が及ばない観点で対応をしっかりと煮詰めていく」と応じました。