まず簡単にアベノミクスについておさらいをしましょう。アベノミクスとはインフレ誘導政策であり、いわゆる3本の矢とは、「異次元の金融緩和」、「大規模な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を指しています。

よく耳にする言葉として「インフレ」「デフレ」という言葉がありますが、インフレとは、物の値段(価値)が時間を追うごとに上がることであり、この反対に、物の値段(価値)が時間を追って下がることをデフレといいます。では何故、こういった状況が生じるのでしょうか?

たとえば、デフレ経済下である薄型テレビを購入しようとします。現在の店頭価格は5万円でしたが、来年には4万円で買えるかも、と思ったら今すぐ購入することを控える人が多いでしょう。その結果、消費が停滞することになります。また売上が伸びない企業は、一層の価格競争を迫られ企業収益を圧迫することとなり、従業員の給料も減少することとなります。これがデフレの負の連鎖(デフレ・スパイラル)と呼ばれる現象です。

逆に現在の薄型テレビの店頭価格は5万でも来年には6万円になってるかも、と思ったら、多少無理してでも「今すぐ買おう」とする人が多くなるでしょう。このような状況下では、少々価格が上昇しても活発に消費が行われますから更に価格の上昇傾向は続くことになりますが、これがインフレです。

このインフレを人為的に起こそうとしているのがアベノミクスです。

 

3本の矢

異次元の金融緩和

ではどうやってインフレ状況を作り出すのか、ですがこれが第1の矢と言われる「異次元の金融緩和」です。銀行を通じて市場に大量のお金を流し込むことで、貸し出しを活発化させることで企業にお金が回り、新たな投資を行うことによって日本企業の価値を高めようとするものです。また国が大量のお金を市場に流すことで皆が「本当にインフレになるかもしれない。」と思い、「今のうちに投資や消費したほうが得だ。」という精神的な変化も促す効果も見込んでいるでしょう。

大規模な財政政策

市場にお金を大量に流し込んだとしても、企業はすぐに収益を上げられる訳ではありません。そこで短期的に企業が利益を増やせるようになるための措置が必要となりますが、これが第2の矢である「大規模な財政出動」ということになります。

その方法として挙げられるのが公共事業です。道路を始めとする公共インフラを建築するためには材料を作る企業や土木工事を行う企業など様々な企業が関わるため、経済的な影響が大きいと言われています。(本当に必要な開発なのかという批判も多くありますが。)

しかし国の財政が厳しいことに変わりはなく、いつまでも大規模な公共事業を続けられる訳ではありません。

民間投資を喚起する成長戦略

従って早く企業が収益を上げられるようになって民間を中心に経済が回るようにならないと、国の財政が破綻してしまいます。そこで出てくるのが、第3矢である「民間投資を喚起する成長戦略」です。公共事業を主とした財政政策が短期政策だとすると成長戦略は中長期の政策と言えます。その内容は規制緩和やイノベーション促進、ベンチャー支援など色々ある様子です。今後、日本経済が復調し、日本企業が国際競争に勝ち残っていけるか否かが一番大切であり、そうした意味からは、アベノミクスにとって成長戦略こそが最重要政策であると言っても過言ではないでしょう。この成長戦略がうまく軌道に乗って、日本の企業がお金を継続的に稼げるようになれば、賃金は上昇、雇用も増加し、国民の生活が豊かになるというのが安倍政権の目論見なのでしょう。