企業が残業代を払う対象となる労働者を限定化しようとするものです。これまで残業代の支払い対象は、管理職(幹部)社員を除く一般社員とされていましたが、この管理職社員に「管理職(幹部)候補者」も加えようとするものです。管理職(幹部)候補者であれば、理論上、ホワイトカラーの正社員は、ほとんどが管理職候補者に入ってしまいます。また適用要件を「年収1075万円」「研究・開発職など」に限定する、とのことですが、この要件は、省令で定める事項であり、法律改正の手続きを経ずに引き下げることが可能です。つまり、一見多くの労働者にとって関係のない法律を装うように小さく法律を制定し、その後、対象者を少しずつ拡大しようとする政府・経済界の本音が垣間見えます。
現行労働基準法では、残業代の不払いは、刑事罰が定められている犯罪行為ですが、それでもサービス残業を強いられ、健康や家庭を犠牲にする働き方が数多く見られます。こうした問題への対応を図らないまま、このホワイトカラー・エグゼンプション法案が成立したら、いわゆるブラック企業までが合法化されることとなります。これまで以上の長時間労働が常態化した厳しい社会となるでしょう。今の日本に必要なのは、残業代不払いを止めさせて、ワーク・ライフ・バランスを守った働き方を広げることですが、ホワイトカラー・エグゼンプションは、これと逆の方向を目指しているのです。