「年収の壁」「ガソリン税」「ライドシェア」など重要政策を追及 - 参院本会議で政府の見解を問う-
1月29日、参議院本会議で石破総理の施政方針演説に対する質疑において、「年収の壁」、「ガソリンの暫定税率廃止」、「ハラスメント対策」、「ライドシェアの課題」など、国民生活に直結する重要政策について政府の見解を問いました。
「103万円の壁」については、昨年12月に自民・公明・国民民主の三党幹事長会談で178万円への引き上げが合意されましたが、政府・与党は補正予算成立後に消極姿勢へ転換し、最終的に123万円への小幅な引き上げにとどめました。冒頭、「合意を反故にするもの」と指摘し、総理に具体的なスケジュールと財源確保の説明を求めました。
また、ガソリンの暫定税率廃止についても、税制改正大綱には明記されながらも、具体的な実施方法が示されていません。補助金縮小によるガソリン価格の急騰を受け、国民負担が増大する中で、実施時期や具体策について総理の見解を問いました。
さらに、就職氷河期世代の支援策縮小に対する実効性、ライドシェア導入による地域交通への影響、公正な競争環境の確保について、今後、政府がどのような対応を進めるのか方向性を示すよう、政府の見解を求めました。
1.「年収の壁」の引き上げ
基礎控除および給与取得控除の103万円の壁を178万円へ引き上げる国民・自民・公明三党幹事長合意の履行について、具体的なスケジュールを早期に明示すよう求めるとともに、政府が財源不足を理由に消極姿勢を示しているのに対して、令和7年度の税収増(約8.8兆円)を考慮すれば財源は確保可能と指摘。さらに、引き上げは消費拡大や労働供給増の経済効果をもたらす。加えて、課税最低限度額(103万円)が生活保護水準(約156万円)を下回る現状は憲法25条の生存権保障の観点から問題であると訴え、石破総理の認識を問いました。
総理は、「昨年12月20日に三党幹事長会談で103万円の壁の引き上げに向け誠実に協議を進めることを確認している。一方で、令和7年度の税収増8.8兆円に対し、28.6兆円の新規国債発行や1129兆円の債務残高を考慮し、慎重な議論が必要。
また、基礎控除の引き上げや特定親族特別控除の創設が家計の可処分所得増加や消費拡大に寄与すると説明。さらに、課税最低限と生活保護費は目的や仕組みが異なり、単純比較は適切でない」と述べました。
2.ガソリンの暫定税率の廃止時期
昨年の自公国幹事長合意を受け、令和7年度税制改正大綱には「ガソリンの暫定税率は廃止する」と明記されましたが、具体的な実施方法は先送りされています。一方、補助金縮小によりガソリン価格が急騰し、国民や企業の負担が増大しています。
ガソリンの暫定税率は本当に廃止するのか。また、その廃止時期はいつか、具体的なスケジュールを含め示すよう総理に訴え見解を求めました。
総理は、「昨年12月の三党幹事長は、ガソリンの暫定税率を廃止することで合意し、具体的な実施方法については引き続き協議を進めることを確認している。政府は、今後の政党間協議の内容や方向性について現時点では予断を持たず、協議の結果を踏まえて適切に対応する」と語りました。
3.就職氷河期世代対策
就職氷河期世代(1993~2004年)は大卒就職率が平均69.7%と低く、多くが非正規雇用を余儀なくされました。安倍政権は支援策を実施しましたが、昨年6月に「一定の成果」を理由に縮小。しかし、国民民主党の調査では87.8%が「支援策を利用していない・知らない」と回答しています。
この世代は「非正規雇用率の高さ」「低収入」「貯蓄の少なさ」に直面し、特に老後の年金受給額の低さが課題です。女性の平均年金受給額は男性の55%で、単身高齢女性の貧困率は47%に達しています。また、約500万人の短時間労働者やフリーランスが厚生年金の適用外となっています。
この状況を踏まえ、出産・育児期間の「みなし加入」制度の拡充、短時間労働者の厚生年金加入要件の緩和、適用拡大などの対策が必要と指摘。総理に対し、就職氷河期世代や女性の低年金問題の認識と、年金制度のセーフティネット強化の必要性について、考えを問いました。
総理は、「政府は令和元年から就職氷河期世代の支援を強化し、正社員化助成金を13万人が活用、ハローワークを通じ約53万人が正社員として就職した。令和元年から令和5年の間に正社員は8万人、役員は13万人増加し、不本意非正規雇用者は9万人減少するなど、一定の成果が得られた。支援策は今後も継続し、就職氷河期世代を含む中高年層全体への支援を強化する方針。特に、年齢が上がることで親と同居できなくなる可能性を踏まえ対策を進める。また、女性や就職氷河期世代の低年金問題について、政府は年金の給付水準確保が重要とし、産前産後・育児休業中の保険料免除や年金生活者支援給付金の支給を継続している。さらに、短時間労働者への被用者保険適用拡大を含む年金制度改正を進める」と述べました。
4.価格転嫁対策
原材料費や燃料費の転嫁は進んでいるものの、労務費の転嫁率は依然低く、昨年の調査では中央値が30%にとどまり、転嫁率が50%未満の企業が半数以上を占めています。特に中小企業では「労務費は企業努力で吸収すべき」との慣行が根強く、不利な立場にあります。政府の「価格交渉指針」や「価格交渉促進月間」の実効性は低く、さらなる対策が必要と指摘し、今後の政府の取り組みや法整備の必要性について、赤澤新しい資本主義担当大臣の見解を問いました。
大臣は、「政府は、労務費の適切な価格転嫁を促すため、昨年末に所管省庁が業界団体と連携し指針の遵守状況を調査した。その結果、価格転嫁が十分に行われていない事例が依然として存在することが判明した。今後、指針の徹底を進めるとともに、サプライチェーンの深い層にも浸透させる。また、下請Gメンによる取引実態の把握や公正取引委員会の是正勧告を強化し、価格転嫁の徹底を図る。さらに、協議に応じない一方的な価格決定を禁止する法改正を進め、執行力の強化を目指す」と応じました。
5.ハラスメント対策
2023年度の労働局へのハラスメント相談は約13万4千件に上り、特にカスタマーハラスメントが急増しています。顧客からの暴言や過剰な要求で精神疾患を発症するケースも多発しています。日本には包括的なハラスメント規制法がなく、厚生労働省の指針も実効性に欠けています。ILOは2019年にハラスメント撤廃条約(第190号)を採択し、多くの国が批准しています。しかし、日本は未批准のままです。外国人労働者の受け入れが進む中、基本法制定と条約批准が必要と指摘し、福岡厚生労働大臣の見解を問いました。
大臣は、「厚生労働省は、ハラスメント対策を強化するため、労働施策総合推進法等の改正法案を今国会に提出する。改正内容には、ハラスメント防止の規範意識の醸成、カスタマーハラスメント対策、就活時のセクシュアルハラスメント対策の強化が含まれる。また、関連条約の批准に向け、国内法との整合性を関係省庁と連携して詳細に検討を進めていく」と述べました。
6.介護事業が直面する課題
日本の介護業界は深刻な人手不足に直面し、訪問介護の有効求人倍率は14.14倍に達しています。業務負担の増大が離職を招き、2024年度の介護事業者の倒産は過去最多の612件、うち訪問介護が448件と全体の7割超を占めています。介護報酬引き下げが収益悪化を招き、資金繰りの悪化や給与未払いが発生。このままでは利用者にも影響が及びます。政府は介護人材確保に向けた具体策をどのように講じるのか、また、低利融資や税制優遇による事業者支援の必要性について、厚生労働大臣の見解を問いました。
大臣は、「政府は、介護分野の人手不足や物価高騰の厳しい状況を認識し、人材確保と経営支援に取り組んでいる。処遇改善として、ICT活用による業務負担軽減や、令和6年度の報酬改定で措置した処遇改善加算の取得促進を進めている。また、補正予算による賃上げ支援も実施している。また、介護事業者には、福祉医療機構の貸付制度を活用し、経営資金を支援している。さらに、介護給付の非課税措置や社会福祉法人向けの税制優遇を継続している。今後も介護報酬や予算を活用し、人材確保と経営安定に向けた総合的な対策を進める」と述べました。
7.医療用医薬品の中間年薬価改定について
日本の医薬品産業は、供給不安、ドラッグロス、ドラッグラグといった課題に直面しています。後発医薬品のデータ不正問題発覚から4年経過した2024年12月時点でも、全医療用医薬品の19.5%(3244品目)が供給不足の状態です。背景には、研究・生産コストの上昇と逆行する中間年薬価改定による企業収益の悪化があり、安定供給や新薬開発投資を妨げています。その結果、製薬企業は海外へ拠点を移し、日本の医薬品産業の国際競争力が低下し、国民の健康にもリスクが生じています。これを改善するため、中間年薬価改定を一旦停止すべきと指摘。また、欧米と比べ低い薬価水準の見直しにより、新薬の上市を促進し、適時適切な治療環境を整えるべきと訴え、厚生労働大臣の認識を問いました。
大臣は、「高齢化による医療費増加を考慮し、国民皆保険の維持とともに、薬価改定を適時実施している。今回の改定では、小児向けの効能追加品目への加算や、最低薬価・不採算品の薬価引き上げを実施。また、診療報酬改定がない年の薬価改定についても、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給、国民負担の軽減を考慮し検討を継続する。さらに、令和6年度の薬価制度改革では、革新的医薬品の特許期間中の薬価を維持する制度を導入している。補正予算では、創薬エコシステムの発展に向けたインフラ強化を進める方針を示した」と述べました。
8.ライドシェアの課題について
全国約600の自治体が「交通空白地」を抱え、高齢者や住民の移動手段が不足しています。その対策として日本版ライドシェアが一部地域で試験運用されていますが、普及には多くの課題が指摘されています。特に、ドライバーの労働環境や安全性確保の仕組みが不十分であり、2種免許制度の見直しについても慎重な議論が求められています。2種免許は、公共交通の安全性を保証する重要な制度であり、要件緩和は事故リスクや利用者の安全低下を招く可能性があります。
このような状況を踏まえて、ライドシェアドライバーと二種免許保持者の関係について、明確な整理が必要であるとともに、ライドシェアの導入によるタクシー事業者や公共交通機関との競争激化が、地域交通網の崩壊を招く懸念があると指摘した上で、公平な競争環境を確保するために、どのような措置を講じるべきか、中野国土交通大臣の見解を問いました。
大臣は、「日本版ライドシェアは、タクシーが不足する地域や時間帯の補完を目的とし、タクシー事業とは異なるため、二種免許は不要とされている。ただし、ドライバーにはタクシー事業者が研修や運行管理を行い、安全対策を徹底している。また、公平な競争環境の確保について、日本版ライドシェアはタクシー事業を補完する位置づけであり、特定の地域や時間帯に限って運行可能な制度となっている。今後も、タクシーを含む公共交通機関と調和した運用を行っていく」と応じました。
9.政治DXを活用した国民の政治参加促進について
台湾では、政府運営の政策提言プラットフォーム「Join」を通じ、市民が直接政策提案を行い、一定の賛同を得れば政府が対応する仕組みが整っています。実際に女子高校生の提案が「プラスチックストロー禁止法」の制定につながるなど、AIやSNSを活用した市民参加が進んでいます。
国民民主党は、台湾の事例を参考に、AIエンジニア安野貴博氏と協力し、日本の政治にデジタル技術を活用する試みを実施。オープンソースソフトウェア「Talk to the City」を用い、SNSや電話音声など多様な情報をAIが瞬時に可視化する実験を行いました。
この結果、国民の声を迅速かつ正確に集約し、政策に反映させる可能性を確認しました。総理は、政治DXの必要性と今後の政府の取り組みについてどのように考えているのか、所見を問いました。
総理は、「AI・デジタル技術の活用により、情報の効率的な利用や高度な情報処理が可能になる。一方で、安全な運用にはセキュリティー確保が不可欠であり、費用面やデータの取扱い、政府が独自開発すべきかといった課題の整理が必要。今後、これらの点を含め、AI活用の進め方について検討を深めていく」と述べました。
「103万円の壁」については、昨年12月に自民・公明・国民民主の三党幹事長会談で178万円への引き上げが合意されましたが、政府・与党は補正予算成立後に消極姿勢へ転換し、最終的に123万円への小幅な引き上げにとどめました。冒頭、「合意を反故にするもの」と指摘し、総理に具体的なスケジュールと財源確保の説明を求めました。
また、ガソリンの暫定税率廃止についても、税制改正大綱には明記されながらも、具体的な実施方法が示されていません。補助金縮小によるガソリン価格の急騰を受け、国民負担が増大する中で、実施時期や具体策について総理の見解を問いました。
さらに、就職氷河期世代の支援策縮小に対する実効性、ライドシェア導入による地域交通への影響、公正な競争環境の確保について、今後、政府がどのような対応を進めるのか方向性を示すよう、政府の見解を求めました。
1.「年収の壁」の引き上げ
基礎控除および給与取得控除の103万円の壁を178万円へ引き上げる国民・自民・公明三党幹事長合意の履行について、具体的なスケジュールを早期に明示すよう求めるとともに、政府が財源不足を理由に消極姿勢を示しているのに対して、令和7年度の税収増(約8.8兆円)を考慮すれば財源は確保可能と指摘。さらに、引き上げは消費拡大や労働供給増の経済効果をもたらす。加えて、課税最低限度額(103万円)が生活保護水準(約156万円)を下回る現状は憲法25条の生存権保障の観点から問題であると訴え、石破総理の認識を問いました。
総理は、「昨年12月20日に三党幹事長会談で103万円の壁の引き上げに向け誠実に協議を進めることを確認している。一方で、令和7年度の税収増8.8兆円に対し、28.6兆円の新規国債発行や1129兆円の債務残高を考慮し、慎重な議論が必要。
また、基礎控除の引き上げや特定親族特別控除の創設が家計の可処分所得増加や消費拡大に寄与すると説明。さらに、課税最低限と生活保護費は目的や仕組みが異なり、単純比較は適切でない」と述べました。
2.ガソリンの暫定税率の廃止時期
昨年の自公国幹事長合意を受け、令和7年度税制改正大綱には「ガソリンの暫定税率は廃止する」と明記されましたが、具体的な実施方法は先送りされています。一方、補助金縮小によりガソリン価格が急騰し、国民や企業の負担が増大しています。
ガソリンの暫定税率は本当に廃止するのか。また、その廃止時期はいつか、具体的なスケジュールを含め示すよう総理に訴え見解を求めました。
総理は、「昨年12月の三党幹事長は、ガソリンの暫定税率を廃止することで合意し、具体的な実施方法については引き続き協議を進めることを確認している。政府は、今後の政党間協議の内容や方向性について現時点では予断を持たず、協議の結果を踏まえて適切に対応する」と語りました。
3.就職氷河期世代対策
就職氷河期世代(1993~2004年)は大卒就職率が平均69.7%と低く、多くが非正規雇用を余儀なくされました。安倍政権は支援策を実施しましたが、昨年6月に「一定の成果」を理由に縮小。しかし、国民民主党の調査では87.8%が「支援策を利用していない・知らない」と回答しています。
この世代は「非正規雇用率の高さ」「低収入」「貯蓄の少なさ」に直面し、特に老後の年金受給額の低さが課題です。女性の平均年金受給額は男性の55%で、単身高齢女性の貧困率は47%に達しています。また、約500万人の短時間労働者やフリーランスが厚生年金の適用外となっています。
この状況を踏まえ、出産・育児期間の「みなし加入」制度の拡充、短時間労働者の厚生年金加入要件の緩和、適用拡大などの対策が必要と指摘。総理に対し、就職氷河期世代や女性の低年金問題の認識と、年金制度のセーフティネット強化の必要性について、考えを問いました。
総理は、「政府は令和元年から就職氷河期世代の支援を強化し、正社員化助成金を13万人が活用、ハローワークを通じ約53万人が正社員として就職した。令和元年から令和5年の間に正社員は8万人、役員は13万人増加し、不本意非正規雇用者は9万人減少するなど、一定の成果が得られた。支援策は今後も継続し、就職氷河期世代を含む中高年層全体への支援を強化する方針。特に、年齢が上がることで親と同居できなくなる可能性を踏まえ対策を進める。また、女性や就職氷河期世代の低年金問題について、政府は年金の給付水準確保が重要とし、産前産後・育児休業中の保険料免除や年金生活者支援給付金の支給を継続している。さらに、短時間労働者への被用者保険適用拡大を含む年金制度改正を進める」と述べました。
4.価格転嫁対策
原材料費や燃料費の転嫁は進んでいるものの、労務費の転嫁率は依然低く、昨年の調査では中央値が30%にとどまり、転嫁率が50%未満の企業が半数以上を占めています。特に中小企業では「労務費は企業努力で吸収すべき」との慣行が根強く、不利な立場にあります。政府の「価格交渉指針」や「価格交渉促進月間」の実効性は低く、さらなる対策が必要と指摘し、今後の政府の取り組みや法整備の必要性について、赤澤新しい資本主義担当大臣の見解を問いました。
大臣は、「政府は、労務費の適切な価格転嫁を促すため、昨年末に所管省庁が業界団体と連携し指針の遵守状況を調査した。その結果、価格転嫁が十分に行われていない事例が依然として存在することが判明した。今後、指針の徹底を進めるとともに、サプライチェーンの深い層にも浸透させる。また、下請Gメンによる取引実態の把握や公正取引委員会の是正勧告を強化し、価格転嫁の徹底を図る。さらに、協議に応じない一方的な価格決定を禁止する法改正を進め、執行力の強化を目指す」と応じました。
5.ハラスメント対策
2023年度の労働局へのハラスメント相談は約13万4千件に上り、特にカスタマーハラスメントが急増しています。顧客からの暴言や過剰な要求で精神疾患を発症するケースも多発しています。日本には包括的なハラスメント規制法がなく、厚生労働省の指針も実効性に欠けています。ILOは2019年にハラスメント撤廃条約(第190号)を採択し、多くの国が批准しています。しかし、日本は未批准のままです。外国人労働者の受け入れが進む中、基本法制定と条約批准が必要と指摘し、福岡厚生労働大臣の見解を問いました。
大臣は、「厚生労働省は、ハラスメント対策を強化するため、労働施策総合推進法等の改正法案を今国会に提出する。改正内容には、ハラスメント防止の規範意識の醸成、カスタマーハラスメント対策、就活時のセクシュアルハラスメント対策の強化が含まれる。また、関連条約の批准に向け、国内法との整合性を関係省庁と連携して詳細に検討を進めていく」と述べました。
6.介護事業が直面する課題
日本の介護業界は深刻な人手不足に直面し、訪問介護の有効求人倍率は14.14倍に達しています。業務負担の増大が離職を招き、2024年度の介護事業者の倒産は過去最多の612件、うち訪問介護が448件と全体の7割超を占めています。介護報酬引き下げが収益悪化を招き、資金繰りの悪化や給与未払いが発生。このままでは利用者にも影響が及びます。政府は介護人材確保に向けた具体策をどのように講じるのか、また、低利融資や税制優遇による事業者支援の必要性について、厚生労働大臣の見解を問いました。
大臣は、「政府は、介護分野の人手不足や物価高騰の厳しい状況を認識し、人材確保と経営支援に取り組んでいる。処遇改善として、ICT活用による業務負担軽減や、令和6年度の報酬改定で措置した処遇改善加算の取得促進を進めている。また、補正予算による賃上げ支援も実施している。また、介護事業者には、福祉医療機構の貸付制度を活用し、経営資金を支援している。さらに、介護給付の非課税措置や社会福祉法人向けの税制優遇を継続している。今後も介護報酬や予算を活用し、人材確保と経営安定に向けた総合的な対策を進める」と述べました。
7.医療用医薬品の中間年薬価改定について
日本の医薬品産業は、供給不安、ドラッグロス、ドラッグラグといった課題に直面しています。後発医薬品のデータ不正問題発覚から4年経過した2024年12月時点でも、全医療用医薬品の19.5%(3244品目)が供給不足の状態です。背景には、研究・生産コストの上昇と逆行する中間年薬価改定による企業収益の悪化があり、安定供給や新薬開発投資を妨げています。その結果、製薬企業は海外へ拠点を移し、日本の医薬品産業の国際競争力が低下し、国民の健康にもリスクが生じています。これを改善するため、中間年薬価改定を一旦停止すべきと指摘。また、欧米と比べ低い薬価水準の見直しにより、新薬の上市を促進し、適時適切な治療環境を整えるべきと訴え、厚生労働大臣の認識を問いました。
大臣は、「高齢化による医療費増加を考慮し、国民皆保険の維持とともに、薬価改定を適時実施している。今回の改定では、小児向けの効能追加品目への加算や、最低薬価・不採算品の薬価引き上げを実施。また、診療報酬改定がない年の薬価改定についても、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給、国民負担の軽減を考慮し検討を継続する。さらに、令和6年度の薬価制度改革では、革新的医薬品の特許期間中の薬価を維持する制度を導入している。補正予算では、創薬エコシステムの発展に向けたインフラ強化を進める方針を示した」と述べました。
8.ライドシェアの課題について
全国約600の自治体が「交通空白地」を抱え、高齢者や住民の移動手段が不足しています。その対策として日本版ライドシェアが一部地域で試験運用されていますが、普及には多くの課題が指摘されています。特に、ドライバーの労働環境や安全性確保の仕組みが不十分であり、2種免許制度の見直しについても慎重な議論が求められています。2種免許は、公共交通の安全性を保証する重要な制度であり、要件緩和は事故リスクや利用者の安全低下を招く可能性があります。
このような状況を踏まえて、ライドシェアドライバーと二種免許保持者の関係について、明確な整理が必要であるとともに、ライドシェアの導入によるタクシー事業者や公共交通機関との競争激化が、地域交通網の崩壊を招く懸念があると指摘した上で、公平な競争環境を確保するために、どのような措置を講じるべきか、中野国土交通大臣の見解を問いました。
大臣は、「日本版ライドシェアは、タクシーが不足する地域や時間帯の補完を目的とし、タクシー事業とは異なるため、二種免許は不要とされている。ただし、ドライバーにはタクシー事業者が研修や運行管理を行い、安全対策を徹底している。また、公平な競争環境の確保について、日本版ライドシェアはタクシー事業を補完する位置づけであり、特定の地域や時間帯に限って運行可能な制度となっている。今後も、タクシーを含む公共交通機関と調和した運用を行っていく」と応じました。
9.政治DXを活用した国民の政治参加促進について
台湾では、政府運営の政策提言プラットフォーム「Join」を通じ、市民が直接政策提案を行い、一定の賛同を得れば政府が対応する仕組みが整っています。実際に女子高校生の提案が「プラスチックストロー禁止法」の制定につながるなど、AIやSNSを活用した市民参加が進んでいます。
国民民主党は、台湾の事例を参考に、AIエンジニア安野貴博氏と協力し、日本の政治にデジタル技術を活用する試みを実施。オープンソースソフトウェア「Talk to the City」を用い、SNSや電話音声など多様な情報をAIが瞬時に可視化する実験を行いました。
この結果、国民の声を迅速かつ正確に集約し、政策に反映させる可能性を確認しました。総理は、政治DXの必要性と今後の政府の取り組みについてどのように考えているのか、所見を問いました。
総理は、「AI・デジタル技術の活用により、情報の効率的な利用や高度な情報処理が可能になる。一方で、安全な運用にはセキュリティー確保が不可欠であり、費用面やデータの取扱い、政府が独自開発すべきかといった課題の整理が必要。今後、これらの点を含め、AI活用の進め方について検討を深めていく」と述べました。