「年収の壁」「ドラッグラグ・ロスの解消」「適正な価格転嫁」など総理の見解を問う~参議院予算委員会~
3月5日、参議院予算員会で「自民党の裏金問題」、「年収の壁対策」「適正な価格転嫁(労務費を含む)」「ドラッグラグ・ロスの解消」「グリーントランスフォーメーション(GX)の諸課題」など総理の認識を問いました。

「自民党の裏金問題」
自民党の裏金問題については、衆議院の予算委員会や政治倫理審査会(政倫審)で1か月以上にわたり議論されてきたものの自民党は真相究明のため、どのような取り組み行おうとしているのか全く見えないと指摘。政府・与党の理屈を述べるのではなく裏金問題の真相究明につながるような答弁がきちんとされない限り、この問題がずるずる長期化し国民の政治不信はより大きくなってしまう。原因究明、真相究明をしなければ再発防止策を講じることは絶対にできない。参議院での政倫審にはすべての当事者が出席し質問に対しきっちり答えるよう訴え、岸田総理大臣の認識を問いました。
岸田総理大臣は「従来から申し上げているように国民の皆さんの政治不信を払拭するためには、関係者が事実を明確にする、説明責任を果たすことが大変重要」参議院での政倫審の対応については「ルールに従って説明責任を果たしてもらわなければならない」と応じました。

「年収の壁対策」
3年前の年末、決算本会議で私から「年収の壁」の問題を指摘し、翌年の予算委員会で数次にわたり議論させていただいた結果、総理より全世代型社会保障構築会議でしっかりと議論させるとの答弁がされ、その後の取り組みにより昨年10月に「年収の壁・支援強化パッケージ」(支援強化パッケージ)が示されたところであり、評価させいただく。
厚生労働省は本年1月末時点で、支援強化パッケージを14万4千人の方が活用して「年収の壁」を超えて社会保険に加入すると見込み、他にも壁を意識して就労している方が60万人いると発表しました。しかし、野村総合研究所のデータでは、130万円未満のパートタイム労働者は655万人いるとされています。また、内閣府の調査では仕事時間を増やせる人は男女合計で265万人いるとされています。厚生労働省が示した60万人という試算については疑問を持たざるを得ないことを指摘しました。
また、支援強化パッケージの一つにキャリアアップ助成金を活用してパート・アルバイトの雇用者を106万円の壁を越えて健康保険や厚生年金に加入させかつ手取り収入を減らさない取り組みをした事業主に対しては、労働者一人あたり最大50万円を支援する仕組みがあるものの、当事者である働く側からは「会社がやる気がなければ従業員の意思だけでは決められない」企業側からは「2年で終わる可能性がある支援制度に安易には乗れない」との声があることを指摘し、支援強化パッケージの暫定措置終了後の対策について早期に明確に示すよう訴えました。あわせて中立的な立場から「年収の壁」を越えて働くことのメリットとデメリットについて広報活動の強化に取り組むよう求め、総理大臣及び厚生労働大臣の認識を問いました。
総理大臣は、暫定措置終了後の対応策について「被用者保険のさらなる適用拡大など、次期年金制度改正に向けての議論を開始している」広報活動については「現在、被用者保険加入のメリット等に関する広報資料を作成している。これらを活用して積極的に周知や広報に取り組んでいく」と応じました。
厚生労働大臣は、2年間の暫定措置終了後の対応策の明示について「本年12月の年金部会で中長期ビジョンを取りまとめる方向で進めている」と応じました。

「労務費を含む適正な価格転嫁」
公正取引委員会は、原材料費やエネルギー価格の高騰に加えて賃上げ原資を確保するため、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(以下、指針)を昨年の11月末に公表しました。また、WEBも活用し全国で指針に基づいた説明会を開催しています。しかしながら製造業を中心に中小零細企業における価格転嫁が停滞しています。指針については、労使双方から「知らなかった」との声が多く寄せられています。指針をどのようにして広く浸透させるか知恵が必要と指摘し、今後の取り組みの検討課題とするよう訴えました。同時に、価格転嫁の一連の取り組みを推進するこのタイミングで、取引慣行にも光を当てて公正な取引を推進し、適正な価格を目指すことが非常に重要であると訴えました。食品業界の取引慣習である賞味期限の3分の1ルールについては、食品ロスをはじめ様々な問題が生じていることを指摘し、取引慣行の是正に向けて業界間の自主規制と同時に調査機関である公正取引委員会も積極的に関与するよう訴え、総理大臣の認識を問いました。
総理大臣は、「3分の1ルールについては、食品業界・消費者等の情報連絡会での議論などを通じて官民連携で進めてきた。引き続き、政府全体としてのこの問題の重要性に鑑みて取り組む」と応じました。

「ドラッグラグ・ロスの解消」
日本の医薬品市場では、未承認・未開発の医薬品(ドラッグラグ・ロス)の割合が欧米に比べて高い状況にあります。また、革新的な新薬(イノベーティブ新薬)の薬価についても、欧米に比べて低い水準にあります。ヨーロッパ各国と同様に、日本も政府が医療用医薬品価格(薬価)を決める方式を採用していますが、それにも関わらず、日本の薬価は相当に低い状況であることを指摘しました。良質な医薬品を国民に安価で提供することは非常に重要であり、そのためにジェネリック医薬品の使用を促進してきましたが、新薬がなければ後発医薬品も存在しないため、後発医薬品のみを使用することは医薬品企業にとって新薬を開発する能力を低下させる可能性があると訴えました。
また、日本の医薬品の輸入超過額は2022年には4.6兆円に達し、輸出を輸入が大幅に上回る状況であることを指摘しました。この間、中間年薬価改定を含め、様々な薬価の見直しが行われ、そのうち約4分の3は薬価の引き下げによって社会保障給付費の削減が行われていることを指摘しました。政府としては、ものづくり産業の強化を図り、国際競争力を高めることが医薬品業界にとって重要であることを訴え、総理大臣の認識を問いました。
総理大臣は、「医薬品産業の健全な維持と発展は、我が国の医療水準を向上させるとともに、経済全体を支えることにもつながる。昨年12月に『創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議』を立ち上げ、研究から開発、製品製造までを日本で一気通貫した創薬エコシステムを目指して、アカデミアやスタートアップへの支援の在り方やドラッグラグ・ロスの問題について議論している。必要な医薬品が国民に安定的に提供されるよう取り組み、その上で全体の国際競争力を高めることを期待する」と応じました。
この答弁に対し、「世界的に見て、日本以外の国ならば助かるはずの患者さんが、日本では薬がないために必要な薬にアクセスできない状況が広がっていることに危機感を持っていただきたい。日本は技術立国といわれるが、医薬品に関しては薬価の引き下げ等の影響を受けて競争力が明確に低下しているという危機感を共有したい。さらに、原材料費の高騰が続く中、医薬品に関しては公定価格制度のため価格転嫁ができない状況にあり、医療費削減のバイアスの中でなし崩しに中間年薬価改定が行われ、収益力が低下し医薬品業界は非常に厳しい状況になっています。医薬品の価格転嫁についてどのように対処するのかを検討していただきたい」と訴え、総理大臣の認識を問いました。
総理大臣は、「2024年度の薬価改定では、原材料費の高騰等に対応して特例的に不採算となっている約2000品目の医薬品の薬価を引き上げるなど、薬価を下支えするための対応を行う予定。このような考え方に基づいて適切に対処してまいる」と応じました。

「グリーントランスフォーメーション(GX)の諸課題」
現在、企業間で進められているGX推進に向けた燃料転換について、限界があるとの声が寄せられています。例えば、石炭を天然ガスに置き換える場合、企業間の協議だけでは、ガス企業がその企業に対してパイプラインを敷設するには初期投資が巨額になるため、安定的に購入してもらえるかどうか不透明な企業に対してエネルギー供給企業側も消極的になり、転換を諦めてしまう状況が生じています。このような事態を踏まえ、地域ごとやコンビナートでまとまってエネルギー転換のスキームを作りGX推進に向け取り組むよう訴えました。