デジタル刑事訴訟における記録管理と制度の課題~参議院法務委員会~
5月13日の参議院法務委員会において、いわゆる「デジタル刑事訴訟法改正案」に関連し、押収・提供された電磁的記録の管理や個人情報の保護のあり方について質疑を行いました。
冒頭では、捜査機関が取得する電磁的記録に含まれる不必要な第三者情報の使用制限、保管期間の規定、消去義務など、デジタル化に伴う新たな課題について、法務大臣の見解を問いました。
大臣は、「現在も法令の趣旨に沿って適正に取り扱っている」との答弁の一方で、「今後、法改正の施行に向けた規定整備が必要である」との認識も示されました。
この答弁を受けて、こうした規定整備が「検討を続ける」といった曖昧な姿勢にとどまらないよう、令和8年度中に予定されているシステム稼働までに、スケジュールを明確にして進めるべきであると訴えました。
また、電磁的記録の廃棄手続については、記録の所在が目に見えない性質を踏まえ、誰の手元にどのような複写データが残っているのかを含め、全体として一貫した管理体制を確立する必要があると指摘しました。
さらに質疑のなかで、証拠物として押収された電子データについて、サーバー上での集中管理が求められる一方、外部媒体などで取得されたデータは、セキュリティ上の理由からシステム内に取り込むことができず、別途管理されているという現状が明らかになりました。こうした多層的な保存形態に対応するため、それぞれの保存方法に応じた明確な廃棄手続と、責任の所在を明確にする必要性を訴えました。
あわせて、入手した電子データの利用目的についても、「適正な取扱いに努める」との説明だけでは、国民の不安を払拭するには不十分であることから、より明確な法的規律の整備が必要であると提言したうえで、特定の目的で取得されたデータが、捜査の過程で他の目的に流用されることのないよう、利用目的の明確な限定と、それに反する使用を防ぐための監視・検証の仕組みを構築するよう求めました。

自己負罪拒否特権(いわゆる黙秘権)との関係では、パスワード提供の強要や、秘密保持命令のもとでの情報主体への接触について、権利侵害のリスクがあることを指摘し、政府の見解をただしました。
政府からは「パスワード提供の強要は想定していない」との立場が示されましたが、実務上、秘密保持と本人への接触のどちらを優先するかはケース・バイ・ケースとされており、現場での恣意的な運用をどのように防ぐかが今後の課題と指摘しました。