デジタル社会と憲法の人権保障~参議院憲法審査会~
5月22日の参議院憲法審査会において、国民民主党・新緑風会を代表し、デジタル社会の進展に伴い新たに生じている人権課題に対応するため、現行憲法における人権保障の在り方について問題提起を行いました。
国民民主党はこれまで、憲法に対する問題意識と目指すべき方向性について、人権保障分野と統治機構分野の二つに分けて議論を行ってきましたが、今回はそのうち人権保障分野の中でも、「デジタル時代の人権保障の在り方」について意見を表明いたしました。
我が国の現行憲法は1946年に制定されたものですが、人権保障の分野に関しては、その後に制定された比較的新しい諸外国の憲法典と比較しても、質・量共に遜色のない充実した内容となっており、この点は高く評価されるべきものと考えております。
しかしながら、デジタル時代の到来やAI社会の進展によって、人権保障を取り巻く環境は急速に変貌しています。特定個人の行動、嗜好、健康状態、経済状態などの個人情報を用いたプロファイリングにより、個人の思想や良心の形成過程に影響が及び、その結果、自律した個人という憲法の前提に影響が生じています。
例えば、商業広告を送る際にターゲットとなる消費者の属性や行動履歴、趣味、嗜好などを把握するマイクロターゲティングや、ネット検索サイトが提供するアルゴリズム等により、各人の嗜好や関心に限定された情報ばかりが提供され、自分が気に入りそうな情報に囲まれて視野狭窄に陥る、いわゆるフィルターバブルの問題があります。これは、有権者の主体的な判断過程のゆがみや、選挙等の公正に対する脅威といった、民主主義のプロセスへの懸念を生じさせるものです。
また、GAFAなど国家と対抗し得る、あるいはそれを凌駕するほどの新しい統治者とも言える存在が登場し、自律的かつ多様な言論空間や、公正かつ自由な経済競争が阻害されるおそれが現実のものとなっています。
こうした状況は、現行憲法制定時には全く想定されていなかったものであり、これに対応して個人の尊厳を守り続けるためには、データ基本権、すなわち情報自己決定権の保障など、時代に即した人権保障のアップデートが必要であるというのが、国民民主党の基本的な立場です。
このような問題意識のもと、今後の憲法議論において検討すべき項目として、以下の論点を提示しました。
・デジタル化に対応するための基本理念として、憲法13条に定める「個人の尊重」をサイバー空間にも拡張する必要がある。
・憲法14条関係では、AIを用いたプロファイリングや遺伝子解析技術の飛躍的発展によって生じるおそれがある「遺伝的属性による差別の禁止規定」を検討する必要がある。
・憲法18条に定める「奴隷的拘束及び苦役からの自由」に関連して、「情報自己決定権の保障」を規定すること。
・フィルターバブルによる思想・良心の形成過程への過度な干渉のおそれを踏まえ、憲法19条の「思想及び良心の自由」に、「思想・良心の形成過程の自由」「自律性の保障」の追加を検討すること。
・プラットフォーム提供者の影響力が言論空間や経済活動に及ぶ現状を踏まえ、憲法21条「表現の自由」に、「精神的自由に関する熟議可能な言論空間の確保規定」の追加を検討すること。
・憲法22条の「職業選択の自由」に関連して、「経済的自由に関する公正かつ自由な競争秩序の確保」や、「プラットフォーム提供者の責務」「その環境整備に関する国の責務」に関する規定を追加すること。
・デジタル時代における民主主義のあり方として、「選挙や国民投票の公正を確保するための憲法上の規律」について検討すること。
国民民主党はこれまで、憲法に対する問題意識と目指すべき方向性について、人権保障分野と統治機構分野の二つに分けて議論を行ってきましたが、今回はそのうち人権保障分野の中でも、「デジタル時代の人権保障の在り方」について意見を表明いたしました。
我が国の現行憲法は1946年に制定されたものですが、人権保障の分野に関しては、その後に制定された比較的新しい諸外国の憲法典と比較しても、質・量共に遜色のない充実した内容となっており、この点は高く評価されるべきものと考えております。
しかしながら、デジタル時代の到来やAI社会の進展によって、人権保障を取り巻く環境は急速に変貌しています。特定個人の行動、嗜好、健康状態、経済状態などの個人情報を用いたプロファイリングにより、個人の思想や良心の形成過程に影響が及び、その結果、自律した個人という憲法の前提に影響が生じています。
例えば、商業広告を送る際にターゲットとなる消費者の属性や行動履歴、趣味、嗜好などを把握するマイクロターゲティングや、ネット検索サイトが提供するアルゴリズム等により、各人の嗜好や関心に限定された情報ばかりが提供され、自分が気に入りそうな情報に囲まれて視野狭窄に陥る、いわゆるフィルターバブルの問題があります。これは、有権者の主体的な判断過程のゆがみや、選挙等の公正に対する脅威といった、民主主義のプロセスへの懸念を生じさせるものです。
また、GAFAなど国家と対抗し得る、あるいはそれを凌駕するほどの新しい統治者とも言える存在が登場し、自律的かつ多様な言論空間や、公正かつ自由な経済競争が阻害されるおそれが現実のものとなっています。
こうした状況は、現行憲法制定時には全く想定されていなかったものであり、これに対応して個人の尊厳を守り続けるためには、データ基本権、すなわち情報自己決定権の保障など、時代に即した人権保障のアップデートが必要であるというのが、国民民主党の基本的な立場です。
このような問題意識のもと、今後の憲法議論において検討すべき項目として、以下の論点を提示しました。
・デジタル化に対応するための基本理念として、憲法13条に定める「個人の尊重」をサイバー空間にも拡張する必要がある。
・憲法14条関係では、AIを用いたプロファイリングや遺伝子解析技術の飛躍的発展によって生じるおそれがある「遺伝的属性による差別の禁止規定」を検討する必要がある。
・憲法18条に定める「奴隷的拘束及び苦役からの自由」に関連して、「情報自己決定権の保障」を規定すること。
・フィルターバブルによる思想・良心の形成過程への過度な干渉のおそれを踏まえ、憲法19条の「思想及び良心の自由」に、「思想・良心の形成過程の自由」「自律性の保障」の追加を検討すること。
・プラットフォーム提供者の影響力が言論空間や経済活動に及ぶ現状を踏まえ、憲法21条「表現の自由」に、「精神的自由に関する熟議可能な言論空間の確保規定」の追加を検討すること。
・憲法22条の「職業選択の自由」に関連して、「経済的自由に関する公正かつ自由な競争秩序の確保」や、「プラットフォーム提供者の責務」「その環境整備に関する国の責務」に関する規定を追加すること。
・デジタル時代における民主主義のあり方として、「選挙や国民投票の公正を確保するための憲法上の規律」について検討すること。


