予算委員会で質疑~参議院~
3月2日参議院予算委員会で「ウクライナ情勢」「ガソリン補助金」「ワクチン接種の進捗」「収入の壁」について次のとおり岸田総理をはじめ各大臣に質疑を行いました。
ウクライナ情勢の中で、私はウクライナ駐日大使が外務大臣との面会を求めているいるにも拘らず、1か月余り実施されなかったこと、またウクライナ大使は在日ウクライナの方々の家族を日本に避難させたいとの考えをお持ちであることを伝えました。その結果、岸田総理は委員会後の記者会見で「在日ウクライナの方々の家族及び第三国に避難したウクライナの方々の日本への受け入れ」を発表しました。

〇ウクライナ情勢
・ウクライナ駐日大使の面会要請に耳貸さず
2月28日に我が国民民主党会派の上田清司議員が、ウクライナ国へのお見舞いと激励のためにセルギー・コルスンスキー駐日大使のところへ訪問された。
その折、大使は、林外務大臣に対して、ロシアからウクライナ侵攻の予兆ともいうべき状況がかなり早い時期から見られていたということで、説明を希望して既に一か月も前に面会を外務省に求めたが、いまだ林外務大臣と面会ができていないという話がされた。
極めて繊細な話であることから、私自身、外務省に確認をしたところ、「事実関係としては確かにそうである」との回答を得た。ウクライナ問題が危機的状況になることは容易に想定ができる中で、一か月も放置してきたこと自体が危機管理対応として極めて緩慢な動きであることを指摘して、総理の認識を問いました。
総理は、「双方の日程等様々な事情があったと想像するが、いずれにせよ、意思疎通を図る機会、情報交換を図る機会、これは努力をして設けるようにしていく姿勢、これは大切であると認識している」と述べました。
この答弁に対し、「双方の事情と言われたが、大使は会いたいと言っているわけであることから、当方の事情である」と指摘した上で、大使は「現在日本で働いているウクライナ人の方はおよそ2,000人いる、この在日ウクライナ人の方の家族を日本に避難させたい。人数は200人ほどになる。人道的観点からヒューマンビザを発行してほしい」とのことである。現在ウクライナでは18歳から60歳までの男子の国外退避が認められていないので、女性と子供また高齢者が対象になると類推される。今ウクライナにいる在留邦人の安全をどのように確保するかとの議論をしているが、同時に、今日本に生活しているウクライナ人の方々に対して、どのような対応を図るのかという議論が必要であることを訴え、一刻も早く政府としてウクライナ大使と面談を速やかに行うよう要請し外務大臣の認識を問いました。
大臣は、「私は大使から面会要望があったことは承知していない。日本への入国を希望する避難民がいる場合、出入国在留管理庁を始めとする関係省庁と連携の上、適切に検討していきたい」と応じました。
大臣が「面会要望を承知していない」と述べたことに対し、「大臣が認識していなかったことに対し、外務省が勝手に止めていたのであれば著しい越権行為である。外交の問題については政治が判断することであり、正確な情報を政治家、政府に届けるのが役所の仕事だと」と厳しく糾弾し、その上で今ウクライナ国内にいる在留邦人は120人ほどと聞いている。この在留邦人の方々がウクライナに残ることを希望されているとのことであるが、背景には、ウクライナで結婚して親類・関係者がいる事情もあって動きが取れないことも容易に想定できる。今後戦闘状態がより激化する事態が生じた場合に、この120人の在留邦人の安全確保を含めて、極めて細かく継続的に邦人の位置確認も含めてしっかりと情報管理をするよう要請し、外務大臣の認識を問いました。
大臣は、「滞在中の邦人に対しては、日本国大使館から連日領事メールを出して、身の安全を最優先とした行動を取ることを呼びかけ、邦人一人一人に連絡するとともに、関連する情報をきめ細やかに発信している。また、陸路でのポーランドへの出国を支援するために、リビウ市に臨時の連絡事務所を開設している。それに加えて、ポーランド側にも退避してきた邦人の受入れを支援するべく臨時の連絡事務所を開設した」と応じました。

※岸田総理は委員会後の記者会見で「在日ウクライナの方々の家族及び第三国に避難したウクライナの方々の日本への受け入れ」を発表しました。
※指摘した当日に林外務大臣とウクライナ駐日大使の面会が実現しました。

・経済への影響分析
ウクライナはヨーロッパにとって、ロシアから供給されている原燃料等の輸送ルートにあたることから、ヨーロッパ経済へのダメージは極めて大きいことが容易に想定できるが、政府は日本への経済的ダメージをどのように分析しているのか、萩生田経済産業大臣に問いましたが「石油については直ちに支障を及ぼすことは想定されていない」「原材料については複数の国から調達可能であり現時点では製造に特段影響はない」など具体的な答弁がないことから、単純にロシアと日本の関係、ロシアとウクライナの関係ではなく多面的に分析して、今のうちからリスク管理をしておくことが極めて重要であること指摘しました。

〇ガソリン補助金が抱える課題
現在政府がガソリン、軽油、灯油、重油等を対象として一リットル当たり五円の補助金を石油元売会社等に対して支払っているが、この補助金の政策効果について総理はどのよう評価しているか問いましたが、総理は、「国民が効果にどこまで実感されているのかこの点もしっかり鑑み、今の価格の状況をしっかり勘案した上で、激変緩和措置を大幅に拡充強化をしていく」と述べたことに対し、現下の原燃油高がいつまで続くのか分からない状況の中で、補助金だけに頼る対策はリスクがあることを指摘しました。
また、昨年のCOP26の成果文書で石油燃料に対する非効率な補助金の段階的廃止に向けて努力することが盛り込まれている。日本政府も同意しており、補助金政策は国際社会から理解を得られる政策ではないことを指摘しました。
さらに、補助金制度はガソリン価格の上昇に合わせ補助金を入れていく制度であり、後追いの制度であることから、補助金を入れてもすぐにはガソリン、灯油の価格は下がらない。それは、ガソリンスタンド等の小売が仕入れた時期によって価格が違うからである。
我々国民民主党は、今国民の皆様が目に見える形でガソリンを安く買えるかと同時に、企業活動においても血液である燃料価格が目に見える形で安く買えるようトリガー条項の凍結解除をした上で、今後ガソリン価格が上昇する可能性が極めて高いことから、その時に重層的に補助金を入れることを提案していることを伝え、総理の認識を問いました。
総理は「指摘のように、激変緩和措置とトリガー条項、その効果の出方は違うのかもしれないが、それぞれ特徴があり様々な課題もある。今後さらに原油価格等が上昇し続けた場合の対応については、国民生活や日本経済を守るために、何が実効的で有効な措置なのか、あらゆる選択肢を排除することなく、追加の対策についても準備をしていきたい」と応じました。

〇ワクチン接種の進捗状況
・3回目接種の忌避への対応
副反応を恐れて3回目のワクチン接種を忌避する動きが大きくなっている現状を踏まえて、関係者の方々にヒアリングを行ったところ「SNSなどを通じて拡散している情報によって、いわゆるモデルナアームといったような副反応を敬遠してワクチン接種を忌避している動きが大きくなっている」との指摘を受けた。政府として、3回目のワクチン接種を行うことのリスクとメリットが一体何なのかということをもっと明確に国民の皆様に示すよう要請し、後藤厚生労働大臣の認識を問いました。
大臣は、「リーフレット等を活用して有効性、安全性や副反応等を丁寧に説明するとともに、自治体とも連携しながら、国民の皆様に適切な情報をしっかりと提供できるように努めてまいりたい」と応じました。

・コロナに感染した方へのワクチン接種
厚生労働省のホームペーに掲載されている新型コロナワクチンのQ&Aの中に「新型コロナウイルスに感染したことのある人は、ワクチン接種をすることはできますか」との問いに対し、「ウイルスに感染した方の場合には90日間、間隔を空けて接種をすることを推奨」との回答がされている。その根拠としてアメリカ疾病予防管理センター(以下CDC)の知見に基づくされている。しかし、CDCの論文ではそのような内容は全く書かれていないどころか、間隔を空ける必要はないと明言されていることを指摘し、政府の見解を求めたところ「2月10日の段階ではCDCと厚生労働省の見解は同じであった。最近CDCの見解が変わった」と述べたことから「コロナに感染した方はQ&Aを見て3回目のワクチンを打つタイミングを90日後にずらしている。今の説明は無責任である」と指摘した上で、厚生労働大臣の認識を問いました。
大臣は、「確かに、2月22日にCDCが書き改めている。我々もきっちりとフォローをしながら、発信についてはしっかりやらせていただく」と応じました。

・ワクチン接種率の示し方
現状、1回目、2回目のワクチン接種を完了した国民は、おおむね80%ほどというのが広く知られているが、この80%は全人口当たりのワクチン接種率であり、ワクチン接種対象者当たりの接種率ではない。国民の皆様はこの数字だけを見ると5人に1人はワクチン接種を忌避していると認識してしまう。正確には、12歳未満の1,100万人強の方はワクチン接種対象外であり、その方々を除いて計算すると90%を軽く超える。他国との比較をする上では全人口に占める割合も必要であるが、同時に接種対象者の内どれだけの方が接種されたのかを客観的に判断する上では二つの数字が必要であることを指摘するとともに検討するよう要請しました。

〇収入の壁
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の人数の推移は、1984年に全労働者に占める非正規雇用労働者の割合は15.3%、604万人であったが、その後、労働法制の規制緩和等もあり、その比率は上昇し2020年の時点で37.2%、2,090万人まで増加している。その内訳は、パート、アルバイトがおよそ70%を占めているのが今の正規、非正規の雇用状況であり、そこで収入の壁について総理と問題意識を共有させていただく。
社会保険料のいわゆる扶養認定では130万円の壁がある。この制度が始まった1993年の最低賃金の全国加重平均はおよそ580円であった。その後、所得税の配偶者控除いわゆる103万円の壁が1995年に始まり、このときの最低賃金の全国加重平均は608円程度であった。昨年の最低賃金は、28円引き上がって930円となった。そもそも103万円、130万円の扶養控除等の壁という制度ができたときと今を比べると、おおむね時給が50%から60%ぐらい上がっている。
時給が上がること自体は喜ばしいが、一方で時給が上がると130万円、103万円の金額にいとも簡単に到達してしまい、これを超えた瞬間に社会保険料の費用が30万円近く発生する。結果、年収が129万円と131万円では大幅に手取り金額が落ちてしまう。これを「収入の壁」といっている。パート・アルバイトの方の年収は130万円のやや下に張り付いており、この状況が日本人の賃金が上がらない一つの大きな理由と考えている。
この壁の存在自体をどう低くしていくか、若しくは無くしていくかとの議論を含めて、控除型の税制の在り方自体を見直すことの必要性に今迫られていることを指摘して、総理の「収入の壁」に対する認識を問いました。
総理は、「働き方に社会保障制度や税制が影響を与えるべきではないとの問題認識は共有する。労働時間や収入によって社会保険の適用が変わる問題などについて、働き方に中立的な制度になるよう、今後、全世代型社会保障構築会議において議論を進めて、男女が希望どおり働ける社会づくりを進めていきたい。また、税制についても引き続き働き方に中立的な制度を幅広く検討し、見直しを進めていく」と応じました。