令和二年度決算に対して代表質問
12月21日、令和二年度決算の概要に対し本会議で国民民主党・新緑風会を代表して岸田総理に質問しました。
半年にわたる国会閉会中に起こった様々な課題・問題について幅広に質問や問題提起を行いました。
質問等の内容は以下のとおりです。

〇国土交通省による建設工事受注動態統計調査のデータの改ざん問題について
隠ぺいに隠ぺいを重ねた国土交通省の統計不正の再発によって、総務省の監視機能に不備があることが明らかになった。
統計法には、統計の作成機関に対する総務大臣及び統計委員会の権限が規定されているが、この権限はいずれも「することが出来る」という「できる規定」であり、強制力に欠けている。
今回の問題で、省庁の自浄能力に期待できないことが明らかになった。従って、統計法に基づく総務大臣や統計委員会の権限を資料提出命令や立ち入り調査の権限を設けるなど、相手が拒むことが出来ない程度まで引き上げるべきと指摘して、総理の認識を問いました。

総理は、「総務大臣及び統計委員会の権限については、現行法で総務大臣が各大臣に措置要求を行うことができる。また統計委員会も各大臣に勧告を行うことができることとなっている。これらの権限の運用のあり方を含めて検討していく」と応じました。
 
〇令和二年度決算について
令和二年度決算は、一般会計の歳出147.5兆円と前年度から46.2兆円増加、歳入は184.5兆円と前年度から75.4兆円増加して共に過去最大となっている。
令和2年度の新規国債発行額は108.5兆円に上り、一般会計のプライマリー・バランスは80.4兆円の大幅な赤字となっている。また巨額な予算を計上したものの年度内に執行できず、翌年度に繰り越した額は30.7兆円、不用額が3.8兆円と共に過去最大額となっている。
多額の翌年度繰越額と不用額が生じたことは、予算の積算が適正に行われていたのか疑問を感じる。コロナ禍にせよ、ずさんな予算編成の言い訳にはならない。史上最高額のどんぶり勘定となった令和二年度決算について、どのように総括しているのか総理の認識を問いました。

総理は、「令和二年度決算については感染の影響が不明な中で万全な対応を期すため15か月予算として切れ目のない支援を行うべく十分な予算措置をしたこと。また、地方自治体や事業者等からの申請を受けて支出するこうしたものが多いことといった事情もあり繰越や不用が生じたものであると考えている」と応じました。

〇決算情報の示し方について
翌年度繰越額が多額となっている背景には、補正予算と翌年度の当初予算を一体として編成する、いわゆる「15か月予算」の考え方があるが、これに対して決算は「12か月」のままであり、予算と決算の月数に差異が生じる事態となっている。15か月予算の妥当性を検証するための情報が、政府から適切に示されなければ、国会において十分な決算審査を行うことは出来ない。「15か月予算」に対する決算情報の示し方について、どのように考えているのか、また今後どういった対応を図るのか、総理の見解を問いました。

総理は、「決算情報の示し方については憲法や財政法の規定により毎会計年度作成し会計検査院の検査を経て、国会に提出するとされている。現在審議をお願いしている令和二年度決算についても憲法や財政法の規定を踏まえ令和二年度における執行実績に基づくものとなってる」と応じました。

〇新型コロナウイルス感染症対策の政策効果の検証に関する認識について
会計検査院による新型コロナウイルス感染症対策の検査は、現在もコロナ禍が続いていることもあり、充分な規模での実地検査が出来ていない。またパンデミック時の医療提供体制や危機管理対応、防疫体制の在り方についても総括できていない。
今回の新型コロナウイルス感染症対策の効果を検証・総括し、今回の経験を踏まえて将来の危機に備える必要がある。これまで政府が行ってきた新型コロナウイルス感染症対策の効果を経済・医療の両面から検証することの必要性について総理の認識を問いました。

総理は、「中長期的な視点から感染症危機への対応体制を整えていくためコロナ対策担当大臣を中心に関係閣僚がしっかりと責任を持って医療面・経済面を含めこれまでの対応の分析検証を進めてまいる。検証に当たっては人流抑制や国と地方自治体との連携、さらには司令塔機能の3点を中心にしっかりと考え来年6月までに司令塔機能の強化を含めた抜本的体制強化策を取りまとめる」と応じました。

〇布製マスク(いわゆるアベノマスク)の過剰在庫への今後の対応について
 厚生労働省が、備蓄用として保管している布製マスクの在庫は、令和3年3月末現在8,272万枚、保管費用などが、8か月で6億96万円となっていることで物議を醸した。またその時点から9か月経過しているので保管費用などは更に7億円近く掛かっているものと推計できる。政府は、布製マスクの在庫の有効活用を謳っているが令和3年10月末時点での在庫は8,130万枚とのことで、月平均で約20万枚しか減っていない。このままのペースだと在庫処分に要する期間は、約400か月、33年以上かかる計算となる。その場合、保管費用なども在庫減少による保管スペースの漸減を織り込んでも単純計算して約150億円要することとなる。
これ以上の税金の無駄遣いを止めるため、損切りの観点から売り払い、譲与、資源リサイクル等も考慮に入れた対応を速やかに検討する必要があることを指摘し、総理の見解を問いました。

総理は、「布製マスクの在庫についてはこれまでの介護施設等への随時配布をはじめ希望する自治体への配布など費用対効果の観点から適切な方策を検討していく」と応じました。
★当日の夜、岸田総理は記者会見で布製マスクの年度内廃棄に言及しました。

〇「新しい資本主義」について
総理は、当初「分配無くして成長なし」、と力強く訴えていたが、その後の新しい資本主義実現会議では、「成長戦略で生産性を向上させ、その果実を働く人に賃金として形で分配する事で国民の所得水準を伸ばし、次の成長を実現していく」と発言している。「成長と分配の好循環」を目指そうとするこの路線は、安倍政権の「骨太の方針」と全く同じである。岸田総理の「新しい資本主義」は、安倍政権の「骨太の方針」と何が違うのか、我々が理解出来るように説明を求めました。

総理は、「アベノミクスなどの成果の上に市場や競争に任せず、市場の失敗や外部不経済を是正する仕組みを成長戦略と分配戦略の両面から資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす利益を最大化しようとする新しい資本主義を進めている」と説明しました。

〇「令和版所得倍増計画」について
岸田総理が就任当初、目玉政策として掲げた「令和版所得倍増計画」は、その後言及されなくなっている。昭和の高度経済成長を象徴する池田勇人元首相の「国民所得倍増計画」を想起させる「令和版所得倍増計画」は今どうなっているのか。また実行するのかを問いました。

総理は、「成長と分配の好循環を生み出すためには所得の引き上げ、すなわち人への投資が重要である。今後、好循環の流れを大きく加速していくためのカギは、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭だと考えている。ここにターゲットおき賃上げも含めた大きな意味での人への投資を集中させ所得を大幅に引き上げることを目指した政策を推進していく」と応じました。

〇最低賃金と「収入の壁」に係る問題について
今年も28円、最低賃金の引き上げが行われた。いわゆる官製春闘のあり方についての議論はさておき、時給が上がること自体は歓迎すべきことと私は捉えている。
しかし一方で、税金や社会保険料負担に関する「収入の壁」が存在することから配偶者の扶養の枠内で働こうとすると、時給単価が上がるほど労働時間を短くしなければならず、その結果、人手不足に拍車がかかる、という事態が生じている。総理は、今後「収入の壁」をどのようにすべきと考えているかを問いました。

総理は、「労働時間や収入によって社会保険の適用が変わる問題など、幅広く女性の就労の制度的制約との指摘のある課題について、今後、全世代型社会保障構築会議を中心に検討し見直しを進めていく」と応じました。

〇労働者派遣制度の見直しについて
日本が低賃金構造に陥った最大の理由は、行き過ぎた労働法制の緩和による非正規雇用労働者の増大にあると考えている。非正規の雇用形態で働く労働者が、労働者全体の約40%に達しようとしている現在、低賃金構造の温床となっている非正規雇用労働者の処遇を改善するための労働者派遣制度の見直しを図ることが喫緊の課題だと考えるが、その必要性について総理の認識を問いました。

総理は、「同一労働同一賃金の実現など労働者の保護等の観点から必要な制度改正を行ってきた。こうした制度が適切に運用され派遣労働者の待遇改善や雇用安定が図られるよう関係者への制度の周知また指導監督を徹底していく」と応じました。

〇法人税制のあり方について
総理が「新自由主義的政策」の誤りを認めて、「分配」を重視した政策への転換を意識されたことの意義は大きいと考えている。経済成長のためにはGDPの約三分の二を占める内需を拡大させる必要があり、そのためには勤労者所得を増やすことが不可欠である。日本人の世帯当たり所得は、ここ20年で約8%減少している一方、第二次安倍政権下で三度にわたって法人税減税が実施された結果、資本金10億円以上の大企業の内部留保は、コロナ禍を物ともせず過去最高額を更新し続け、昨年はついに300兆円を超えた。「成長と分配の好循環」が全く機能していないばかりか、不公平な分配が経済成長を阻害している。税制優遇措置によって利益を上げ続けても、貯め込むだけで還元しないに企業に対しては、税の適正負担の観点から、法人税制を応能負担の原則に照らして累進課税に戻すことも検討すべきと指摘し、総理の認識を問いました。

総理は、「指摘の法人に対する累進税率の適用については、企業の規模・形態に対し中立的であることが望ましいことから課題があると考えている。今後の法人税制のあり方については経済社会の構造変化を踏まえながら引き続き総合的に検討していく」と応じました。

詳細は動画でご確認ください。