刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質疑~参議院法務委員会~
5月9日、参議院法務委員会において刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の質疑の中で、名古屋刑務所で刑務官が被収容者へ暴行等を繰り返し行い13名が起訴された事案に対し、刑務官の人材教育について提言しました。また認知症により介護を必要とする受刑者への今後の対応について提言し、斎藤法務大臣の認識を問いました。

法務省は、名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行や不適切な処遇を繰り返していた問題で、13人の刑務官を特別公務員暴行陵虐などの疑いで書類送検された事件を受けて、全国の刑務所や拘置所、少年院などの職員にアンケート調査を実施しました。
このアンケート調査の結果で名古屋刑務所と他の施設の平均を比べると、「仕事上のストレスの原因として最も大きいものを被収容者との関係」と回答した職員の割合は、名古屋刑務所では24.4%他の施設の平均14.3%、「直近3年間で被収容者から暴言や侮辱するような言動をされたことがある」と回答した職員は、名古屋刑務所56.6%他の施設の平均44%、「被収容者は刑罰などの理由があって収容されているのだから多少つらい目にあっても仕方ない」と回答した職員は、名古屋刑務所23.1%他の施設11.3%と2倍以上になっており、職員のストレス面や被収容者に対する意識等において名古屋刑務所と他施設との間で差が生じていることが明らかになりました。
また2023年2月1日現在、名古屋刑務所で勤務している一般職員で他施設における勤務経験のない職員は78%であり、先輩等の仕事のやり方やこれまでの価値観が色濃く反映されていると考えられます。
このような状況に対して、今回の事案を繰り返さないためには、刑務官が定期的に様々な職場で経験を積むことと同時に、外部研修を受講することによりバランスのいい刑務官として役割が果たせる人材育成に取り組むことが重要であると指摘し、この機会に検討するよう法務大臣に提言しました。

また高齢者の被収容者が増加するなか一部の刑事施設で60歳以上の被収容者に認知症スクリーニング検査が実施されています。2022年では973人のうち認知症が疑われると判定された183人に対し医師の診察により55人(5.7%)が認知症と診断されました。この結果を受けて2023年度から全国の刑事施設では入所時年齢が65歳以上の被収容者を対象に認知症スクリーニング検査が実施されています。
高齢化が進み高齢の被収容者も増加していることから、認知症等により生活がおぼつかない者の生活の質を高める観点と同時に刑務官の負荷を軽減するため、介護刑務所や刑事施設内に介護施設の併設などを検討する時期に来ていることを提言し、法務大臣の認識を問いました。
大臣は、今後検討していくべき問題であると述べました。

本法案は5月10日、国民民主党をはじめ賛成多数で成立しました。