国籍法第3条第3項新設による遡及喪失によって生じる問題を質疑~参議院法務委員会~
12月8日、法務委員会において、今回の国籍法の改正がされた際に起こり得る問題について関係省庁に問いました。
法務省は昨年8月に事務連絡を発出して、無国籍問題の解決に向けて関係省庁、弁護士、国連高等弁務官事務所などによる協議会を設置していますが、この協議会を充実させるため定期的に意見交換の場を設けるよう求めました。あわせて、今回の国籍法の改正によって無国籍となる事象を防止・削減するため法務省でマニュアルを作り、関係各省に配布し申請に必要な情報について申請者に理解していただき、正確な手続により無国籍の防止・削減に向けた取り組みを進めるよう訴えました。

その上で、国籍が遡及的に否定された場合に起こり得る問題を例示して関係省の答弁を受けましたが、いずれの省庁においても不明確であると共に、無国籍となった以降の対応が示されるには至りませんでした。
法務大臣に対して、今回の法改正により想定しない事態や問題が出てくることを指摘。無国籍者を生み出さないためにも無国籍認定手続の設置を訴え、大臣の認識を問いました。
大臣は、政府として提出している法案であり、様々なケースについては、きちんと対応していく必要がある。無国籍認定手続の設置については、その必要性、可能性を含め我が国の実情や国際的な動向を踏まえながら、今の時点では慎重に対応していきたいと応じました。

(国籍が遡及的に否定された場合に起こり得る問題)
・国籍が遡及的に否定された場合、国政選挙で選挙権を行使して行った過去の投票に瑕疵は生じないか
・被選挙権を行使し、地方議員、地方の首長等の地位にあった場合、国籍が遡及的に否定されたことにより地方議員や地方首長の地位は直ちに消失するのか
・国務大臣の地位にあった者が、国籍が遡及的に否定された場合、国務大臣の地位は直ちに消失するのか
・外交官の地位にあった者の国籍が遡及的に否定された場合、外交官の地位はどうなるのか
・裁判官の地位にあった者が、国籍が遡及的に否定された場合、裁判官の地位はどうなるのか
・国籍が遡及的に否定された裁判官の判決には瑕疵は生じないのか
・当事者が日本に住所を有する日本人であることを前提に婚姻の準拠法が日本法であると判断されて婚姻したが、日本国籍が否定された結果、準拠法が異なることにより、過去の婚姻に全く瑕疵は生じないのか
・当該当事者が国民健康保険や国民年金に加入していた場合、加入の地位はどのうなるか
・当該当事者が生活保護受給者であった場合、受給資格はどうなるのか
など