在留特別許可のガイドラインの解釈を問う~参議院法務委員会~
3月22日、法務委員会で昨年の通常国会で成立した出入国管理及び難民認定法(入管法)改正の審議の中で大臣と確認した事項や付帯決議への対応状況について問いました。

入管法改正の審議において、在留特別許可に当たっての考慮事項の評価に関する考え方をガイドラインとして策定し明示化を図ることを確認し、本年3月5日に新たな「在留特別許可に係るガイドライン」が示されました。
このガイドラインでは、積極要素と消極要素が記載されており、日本に入国することになった経緯において不法または不正入国した場合その経緯に認められる帰責性の程度に応じて、消極要素として考慮するとされています。
しかし、庇護希望者として来日した方々の中には、出身国政府による迫害を恐れて正規のパスポートを取得せず、やむを得ず他人名義のパスポートで緊急的に入国をせざるを得なかった方々もいらっしゃるとの指摘があります。また空港で庇護を求めた方の中には入国審査におい退去を命ぜられ、これを拒むことで難民申請を行うことができた方もいると指摘されています。
このことを踏まえて不法または不正に入国した場合、ガイドラインでは「その経緯に認められる帰責性の程度に応じて消極要素として考慮されます。」と書かれているものの、やむを得ない事情については消極要素とすべきではないとの意見があることを指摘。あわせてガイドラインでは、退去強制令書発付後の事情変更等を原則として考慮しないと記載をされている一方で、特に考慮する積極要素として「本国における情勢不安に照らし、当該外国人が帰国困難な状況があることが客観的に明らかであること」として積極要素とされています。この「本国における情勢不安」とは、退去強制令書の発付後であっても、在留特別許可の判断を行う時点での本国情勢を踏まえて判断するという解釈でいいのか、政府の見解を問いました。
政府は、やむを得ない事情により不法入国した場合の在留特別許可については「指摘のような事情によって、帰責が全くないというような場合であれば、消極要素として考慮されないこともありうる」、退去強制令書発付後に事情変更等があった場合については「指摘のような本国における情勢不安が新たに生じた場合には、事情を踏まえて在留特別資格の許否判断をすることとなる」と応じました。

これから外国人との共生社会を実現していくこと、また技能実習法自体が抜本的に見直されて育成就労の議論も行われます。今後より一層の出入国管理のあり方や体制の整備が重要になってきます。昨年の入管法改正審議の中で、入管行政が限られた手数や予算の中で相当無理をして運用されている実態が明らかになり、少しずつ体制整備に向けた取り組みを進められてきています。しかし、増え続ける外国人の出入国の状況を考慮すると、一層の体制整備、出身国情報を調べようとしてもインターネット環境におかれていない難民調査官の環境整備、さらには職員の育成など取組むべき重要なことが多々あることを指摘し、小泉法務大臣の認識を問いました。
大臣は、「指摘のとおり、外国人との共生社会、これを実現し推進していくためには、制度だけではなくて、それを支える出入国管理庁の体制整備、環境整備が非常に大事なことである。これまでも人員体制の整備やIT環境の整備に努めてきたが、今後さらに一層の人員の確保、必要な予算の確保に一生懸命加速をつけて頑張る」と応じました。