外国人受け入れ政策と課題を問う~参議院 法務委員会~(法務および司法行政等に関する調査)
3月13日、法務委員会で、「改正入管法の運用状況」「技能実習制度を取り巻く課題」「日本語教師の労働環境」について、法務大臣の認識を問いました。

【改正入管法の運用状況について】
不法在留者の推移を見ると、2021年は6万6,759人、2022年は7万491人、2023年は7万9,113人と増加しています。
今後、外国人の受け入れはさらに拡大する見込みであり、2030年までにインバウンド観光客を6,000万人にするという目標が掲げられています。また、新たに導入される「育成就労制度」により、外国人労働者の受け入れも拡大されることが確実視されています。
こうした状況の中で、外国人の入国が増えると不法在留者の増加が常態化する可能性があり、それが進めば、せっかく整えた外国人労働者の受け入れの枠組みが、将来的に欧米のような社会の分断を招く議論につながりかねません。
このような背景を踏まえ、不法在留者の増加要因の分析と対応について、鈴木法務大臣の見解を問いました。
大臣は、不法在留者の増加要因として、水際対策の緩和による新規入国者の増加と、新型コロナウイルスの影響による特例措置の終了に伴う在留資格未更新者の発生を挙げた上で、「入管庁としては、不法在留者削減に向け、厳格な入国審査、摘発の強化、出頭申告の環境整備を進めており、これにより、この半年間で不法在留者の減少につながった。また、退去強制が確定した不法残留者については、改正入管法により創設された送還停止効の例外規定を適切に運用し、確実な送還を促進して、さらなる不法在留者の削減に向け全力で取り組んでいく」と応じました。

【技能実習制度を取り巻く課題について】
特定技能制度に関する分野別運用方針の改正について、政府内で議論が進められている中、深刻な人手不足を背景に、特定技能外国人による訪問系介護サービスへの従事を認める方向で検討が進められています。
現在の介護業界の状況は厳しく、昨年は過去最多となる612件の休廃業が発生し、そのうち448件が訪問介護事業者でした。 事業継続が困難な中で、多くの事業所が閉鎖を余儀なくされています。
こうした状況にある訪問介護業界において、十分なコミュニケーション能力を持たない外国人の従事が、新たな低賃金労働の問題を生む可能性があることを指摘し、法務大臣の見解を問いました。
大臣は、「特定技能外国人を訪問系サービスに従事させるにあたり、利用者と一対一で業務を行う特性を踏まえ、ハラスメント防止や相談体制の整備を進めることが重要であり、外国人介護人材の権利保護を徹底するための取り組みが極めて大切だと認識している。特定技能制度を所管する法務省としても、労働条件や労働環境の問題が生じないよう、関係省庁と連携し、適切な対応を進めてまいる。」 と応じました。
この答弁に対し、「介護業界、特に訪問介護は深刻な人手不足に直面しており、有効求人倍率は14.14倍と極めて高い状況にある。その背景には、業務負荷の重さに対して処遇や賃金が見合っていないことが大きな要因として挙げられる。給与の支払いも厳しい中で、人材確保だけに注力すると、過去の技能実習制度における縫製業の問題のように、劣悪な労働環境が社会問題化する懸念がある。また、外国人の失踪にはハラスメントや契約違反、低賃金などが指摘される一方で、日本語力の不足も大きな要因となっている。十分な会話ができず、コミュニケーション不足が問題を深刻化させ、結果として失踪につながるケースが多くある。日本語教育の強化は、共生社会の実現に不可欠であり、重要な取り組みとすべきである」 と指摘しました。

【日本語教師の労働環境】
日本語教師の処遇について、2020年度に実施された日本語教師の資格創設に関する状況調査によると、法務省告示校に勤務する常勤の日本語教師の年収は、300万円~400万円未満が最も多く46.3%を占め、次いで200万円~300万円未満が26.7%、400万円~500万円未満が16.8%となっています。また、非常勤の日本語教師の時給は、2,000円~3,000円未満が最も多く59.5%、次いで1,000円~2,000円未満が34.4%という結果でした。
この調査から、日本語教師の処遇は依然として厳しく、特に非常勤の給与水準の低さが課題となっています。日本語教育の需要が高まる中で、非常勤教師の割合が増えているのが現状です。さらに、非常勤教師は「こま給」制であるため、授業準備や試験採点などの業務が時給に反映されず、実質的な時間単価は1,500円を下回り、場合によっては1,000円を切る状況も見られます。
今後、外国人との共生を進める上で重要なのは、言葉の壁を低くし、円滑なコミュニケーションを確保することです。そのためには、良質な日本語教育を提供できる環境の整備や、優秀な人材の確保に向けた施策が必要です。
現在、多くの高齢者や引退者がボランティア的に担っていますが、これに依存し続けるのは限界があり、早急な対応が求められています。政府として、日本語教師の処遇改善に向けた具体的な施策を講じるよう提言しました。