性犯罪加害者の再犯防止および性犯罪被害者の経済的・精神的ケアへの認識を問う(刑法・刑訴法改正案、性的姿態撮影処罰法案)~参議院法務委員会~
6月15日、参議院法務委員会で性犯罪加害者の再犯防止の取り組みや犯罪被害者の経済・精神的ケアのための体制整備に関する政府の対応や認識を齋藤法務大臣に問いました。

加害者に対して厳しく罰することと被害者を救済する手続きをより強く進めていくことと同時に、再犯を防ぐための防止の取り組みというものが同時に議論されないといけないことを強く感じています。今回の法改正を受けて、性犯罪の再犯防止の取り組みを強化する上で、性犯罪加害者の更生プログラムをきちんと整備する必要性があることを指摘し、法務大臣の認識を問いました。
大臣は、本年3月に決定された性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針において、2025年度までの3年間を更なる集中強化期間と位置付けて、指摘の性犯罪者に対する再犯防止プログラムの充実をはじめ、関係府省が連携して各施策を推進していくこととしている。刑事施設等においは、認知行動療法の手法を取り入れた性犯罪者処遇プログラムを実施しているところ、効果検証の結果や外部有識者からの提言等を踏まえて不断の見直しを図ってきている。また、刑事司法手続きから離れた者に対しても、昨年度に地方公共団体が活用可能な性犯罪者に対する再犯防止プログラムを開発し、各都道府県に提供している。これらの取り組みにより一定の成果を上げているものの、関係省庁とも連携しながら引き続き性犯罪者の再犯防止に努めてまいると応じました。
この答弁に対して、認知行動療法は鬱の治療等では高い効果が海外で立証されているものの、性犯罪者の矯正・更生を目的とした場合に認知行動療法が適切なものか検証を行う必要があることを提起しました。

性犯罪裁判の審理期間の多くは半年以上を要するということに加えて、犯罪被害者の多くは学校や仕事を辞めたり休んだりということで経済的負担が極めて大きいとの指摘あります。こうした状況を踏まえて性犯罪被害者の負担軽減のための体制整備を行うべきと指摘し、大臣の認識を問いました。
大臣は、政府において第四次犯罪被害者等基本計画に支援等のための体制整備への取り組みや刑事手続きへの関与拡充への取り組みを重点課題に係る具体的施策の一つとして掲げ、犯罪被害者等に寄り添った支援に取り組むこととしている。法務省としては施策を着実に実施することが犯罪被害者等の負担軽減に資するものと考えており、引き続き犯罪被害者等基本計画や更なる強化の方針等に沿って、関係府省庁とも連携しながら、性犯罪の被害者を含む犯罪被害者を保護、支援する取り組みの更なる推進・充実に努めてまいる応じました。

暴行、脅迫の要件については、これまで最高裁判例に従って相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものという最狭義の解釈に基づいて判断がされてきました。今回の改正によって、従来の解釈に及ぼす影響について大臣に確認しました。
大臣は、改正後の暴行とは身体に向けられた不法な有形力を言い、脅迫とは他人を畏怖させるような害悪の告知を言うものであり、いずれもその程度は問わない。すなわち現行の強制わいせつ罪、強制性交等罪の暴行又は脅迫についての判例上の解釈と異なり、改正法においては暴行又は脅迫の要件としては、抗拒を著しく困難にさせる程度であることは不要である。その上で暴行又は脅迫によって同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態で性的行為が行われた場合には、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪が成立し得ると応じました。

性暴力事件の裁判における「困難な状態」の解釈にばらつきが指摘されています。こうした指摘に対して何らかの対抗を講じているのか最高裁に確認しました。
最高裁は、司法研修所において実施している研修で性犯罪に関する刑法の運用を巡る諸問題について、刑事事件を担当する裁判官同士で意見交換を実施し、その資料を全ての刑事事件を担当する裁判官に周知している。また性犯罪に直面した被害者の心理等を理解して適切な審理を行うことが重要であり司法研修等で、性犯罪の被害者の心理に詳しい精神科医、臨床心理士、性被害者の方を講師として被害時の被害者の心理状態、被害後の精神状態への理解を深める研修を実施していると述べました。