拉致被害者の即時帰国に向けて~北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会~
12月23日、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会で、北朝鮮による拉致被害者への呼びかけを目的とした短波ラジオ放送「しおかぜ」の2波放送継続に向けたKDDI、NHK、特定失踪者調査会の3者協議における課題について指摘し、林拉致問題担当大臣の見解を質しました。
特定失踪者調査会(調査会)は、2005年より北朝鮮に向けて、拉致被害者等へのメッセージ「しおかぜ」を短波ラジオ放送で発信し続けています。この放送は、茨城県古河市にある日本唯一の短波放送送信施設「KDDI八俣送信所」から送信されています。八俣送信所はKDDIからNHKが一括して借り受け、その一部を調査会が使用して「しおかぜ」の放送を行っています。
八俣送信所には300キロワット送信機が5台、100キロワット送信機が2台設置されていますが、後者は老朽化のため、2024年後半に廃棄される予定です。「しおかぜ」放送では、北朝鮮の妨害電波対策として2波を使用しています。しかし、2025年4月以降、送信機の廃棄に伴う工事期間中は1波放送に制限される見込みであり、このため妨害対策や北朝鮮有事時の24時間緊急放送に支障をきたす可能性があります。
現在、KDDI、NHK、調査会の3者間で2波放送の継続について協議が進められています。しかし、協議の中で、NHKがKDDIを通じて調査会に対し、放送時間帯の変更を一方的に通告しているだけで、実質的な協議が行われていない状況です。放送時間帯の変更により、これまでラジオを受信できていた方々が聞けなくなる可能性が懸念されています。
石破内閣が拉致問題を最優先課題として掲げているのであれば、NHK任せにするのではなく、政府が主導して「しおかぜ」の2波放送の継続に向けた対応を取るべきと指摘し、林拉致問題担当大臣の見解を問いました。
大臣は、「当事者である3者間で協議を尽くすことがまず重要であると考える」とした上で、政府の関与については「放送法に定められた放送番組編集の自由に配慮し、慎重に検討すべきである」と述べました。
これに対し、「編集の自由は尊重されるべきだが、政府が最優先課題と位置づけている問題にどのように向き合うのかが問われている。大臣の答弁では、納得のいく回答とは言えない」と強く訴えました。

岸田内閣の時には、ハイレベル協議を行って、拉致問題に特化して取り組む方針が示されました。この背景には、拉致、核、ミサイルを包括的に扱うことで、拉致問題の解決が後回しにされる可能性があるとの懸念が指摘されています。既に核、ミサイルに関する事実関係は明らかになっており、拉致被害者の救出に焦点を当てた取り組みが求められるとの考え方です。
前内閣と同様に拉致被害者救出のための取り組みを特出して取り組むべきと指摘し、岩屋外務大臣の認識を問うとともに、政府とし「全ての拉致被害者」とは具体的に誰を指すのか、林拉致担当大臣に見解を質しました。
岩屋大臣は、「拉致問題は、時間的制約のある重大な人道問題であり、一刻も猶予できない課題である。特に切迫感を持って取り組まなければならない」と述べました。
林大臣は、「拉致被害者として認定された17名以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を否定できない行方不明者が存在する。この認識の下、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保と即時帰国のため全力を尽くしている。今後も全ての拉致被害者の早期帰国を実現するため、果断に取り組む」と述べました。