日本介護クラフトユニオン(NCCU)介護報酬改定に係る要請書を厚生労働省に手交!
9月7日、日本介護クラフトユニオンとともに2021年度介護報酬改定にあたり、「介護報酬家庭に係る要請書-人材確保のために-」を厚生労働省に手交し意見交換を行いました。

要請書要旨
1. 介護報酬の引き上げを行うこと
 2019年12月、社会保障審議会介護保険部会においてとりまとめられた「介護保険制度の見直しに関する意見」の中で、「介護人材確保のためには、介護職員の更なる処遇改善を着実に行うことが重要」と明記されました。介護従事者の処遇改善の必要性については、政府も強く認識されているところです。人材不足による介護現場の疲弊は大変深刻な状況にあります。
現在、介護業界の有効求人倍率は4.15倍(2020年5月 全産業1.20倍)と高止まりの状態が続いています。介護人材は、2025年度末には約245万人の需要が見込まれていますが、このままでは「介護難民」の増加とともに、介護保険制度の崩壊にも繋がりかねません。
 こうした状況を転換するための極めて有効な施策は、介護従事者の処遇(賃金)の改善だと考えます。そして、その賃金水準は、仕事の社会的役割と専門性から、日本の全産業平均の賃金水準が確保されるよう、改善を進めるべきです。
また、本来、賃金は労使間で自主的に決定すべきものです。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し、経営の悪化により事業の存続も危ぶまれている介護事業者もある中、現在の介護報酬の水準では処遇を改善することが困難であると言わざるを得ません。
したがって、介護従事者が安心・安定して永く働き続けることができるよう、介護報酬の引き上げを行うことを要請します。
2. 介護報酬は簡素で納得性のある設計と、改定ルールを明確に
 介護報酬の改定にあたっては、介護事業者経営実態調査における「給与費率と収支差率」等が分析され、介護報酬設定の引き上げ・引き下げ理由の大きな要素とされているところです。しかし、そのルールが明確ではなく、事業運営や業績に影響を与えているとともに、結果として、その不明確さは介護従事者の処遇にも影響することになります。
したがって、介護報酬の改定にあたっては、改定ルールを明確にし、健全な事業運営や、介護従事者の処遇の改善に資することを可能にする単位設定となるよう要請します。
 また、介護報酬は改定の度に複雑になり、加算・減算等、利用者・家族をはじめ現場で働く介護従事者も理解することが困難な状態であり事務量の増大にもつながっています。利用者・家族が使いやすく、また適切なサービス提供を行うためにも、報酬の設定にあたっては簡素で納得性のある設計となるよう要請します。
3. 「介護職員処遇改善加算」等の仕組みを再構築すること
 これまで国は、加算算定に必要な要件を追加することで加算拡充を図ってきましたが、全産業との平均賃金格差は依然縮まらず、本来の目的である処遇改善には結びついていません。処遇改善加算の配分方法は法人の判断に委ねられているため、介護現場からは「配分方法が不透明」「介護職員に行き届いているのか不安」等という声が寄せられています。
 また、2019年10月から施行された介護職員等特定処遇改善加算については、全体の取得率が57.8%(2019年12月)と6割にも達していないうえに、加算Ⅰの取得率において最も高い介護老人福祉施設(69.1%)から最も低い地域密着型通所介護(10.8%)まで、サービス形態によって大きな開きがあることがわかりました(厚生労働省 介護給付費等実態調査)。特に中小の介護サービス事業者からは、「取得要件が多すぎる」「加算率の割には手間がかかる」等の理由により取得しないという声も聞かれます。
さらに、処遇改善加算等の取得に関する事務負担も、介護現場の負荷となっている実態があります。
 したがって、国は、加算に必要な要件に加え介護従事者のあるべき賃金水準を明確に示すべきと考えます。そのうえで、基本報酬に現行の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」相当額を組み込み、必要な要件と賃金水準を満たさない法人は基本報酬の減算等、仕組みを再構築することを要請します。
4. 身体介護と生活援助を一元化すること
 身体介護と生活援助は、生活する上での一連の流れであり、切り離してサービスを行うことは困難です。介護のあるべき姿である、QOL(生活の質)を向上させるためにも一元的にサービスを行うことは重要であり、ひいては、生産性の向上や介護人材不足の解消にもつながります。
 また、介護現場では、利用者やその家族に「生活援助は専門性が低く、誰でもできる『家事の延長』である」との誤解が根強くあり、それは「家政婦さん扱いされて困る」との苦情が一向に改善されない原因にもなっています。
したがって、身体介護と生活援助は一元化し、サービスの質と利用者満足度の向上に資することを要請します。
5. 介護従事者の確保と定着のための施策の推進
介護労働は、きつい仕事内容の割に賃金が安い、人間関係を理由とした離職率が高い、慢性的な人材不足による過重労働で休暇も取りにくい等、ネガティブなイメージが定着しており、人材確保の促進や介護事業の運営を阻害しています。
しかし、介護の仕事だけがもつ「魅力」や「やりがい」「面白さ」を価値ある労働として、その意義を評価する介護従事者は多く存在します。介護労働の魅力を積極的に社会に発信することは、介護業界への入職促進につながり人材不足の解消にもつながると考えます。(例えば、義務教育課程における体験実習・施設見学の推進や学校の進路相談関係者に対するPR、マスメディアを通したポジティブイメージの積極的な発信など)
したがって、具体的な取り組みを策定し、様々な角度からのアプローチの展開を推進することを要請します。
6. 介護ロボットの活用と推進
 介護労働は力仕事が多く、職業病とも言える腰痛を理由に離職する介護従事者は少なくありません。介護ロボットは、介護従事者の安全衛生、とりわけ腰痛による離職を防ぐ効果、また転倒や転落、徘徊の予防等、介護サービス利用者に安心感を与える等、多くのメリットが考えられます。
 2019年にNCCUが行った「就業意識実態調査」では、介護ロボットの活用について賛成する介護従事者は50%を超え、「腰痛や体の負担が減る」「人手不足を補える」といった理由が大半を占めました。
しかし、価格が高いことや介護事故への懸念から、導入している事業所はまだ少数となっています。
したがって、介護ロボット導入の推進にあたっては、国の補助制度をさらに拡大・充実させるとともに、介護事業者に対し積極的に活用するよう働きかけていただくことを要請します。
 また、魅力ある実用性の高いロボットの開発と普及にあたっては、移乗や移動介助等、利用者と介護従事者目線による十分な調査と現場ニーズの把握を行い、軽量で簡単な装着性の実現や適切かつ低廉な価格設定となるよう要請します。