共同親権や法定養育費の導入などに向けた民法改正案について参考人質疑~参議院法務委員会
5月7日、法務委員会で共同親権および法定養育費の導入等に向けた民法改正法案に対して午前4人、午後4人の参考人から意見陳述を伺った後、法定養育費の導入で子育て支援につながるか、また裁判決定に伴う養育費を支払わない別居親への罰則規定の導入に対する見解などについて参考人の方から伺いました。

午前の質疑では
山崎参考人に「改正案では法定養育費が導入されることになるが、実際に子育て支援に役立つと考えるか」、また「共同親権が導入され面会交流が今後進むと想定したときに、子どもに別居親が会いに来た際に同居親が懸念することは何か」と問いました。
参考人は、法定養育費について「非常に低い金額で設定されるのではないかとの懸念がある。低い金額で設定されてしまった法定養育費を変えようと家裁に申請しようとしてもかなりハードルが高くなってしまうと感じる」、また面会交流で懸念されることは「シェルターに入ってくるお母さん、また協議離婚であってもDV相談を受けているお母さんの多くは、子どもが会いたいのなら会わせたいという。ただ会わせられないのはなぜか。それは危険が伴うからである。特に住民票を閲覧制限して隠れて暮らしている場合、面会交流をきっかけに居所が分かってしまい押しかけてくるのではないかとの懸念がある。離婚後、お母さんの単独親権になって、面会交流を民間の支援組織にお願いしたケースでは、面会している最中にスタッフの目を盗んで父親が子を連れ去ってしまったケースもある。また面会交流を通じて復縁を迫るケースが非常に多い。そのようなことがないように、安心して別居親に会わせることができる制度設計をまず備えた上で、安心して面会交流をさせたいと思っているお母さんは非常に多い」と語りました。

沖野参考人に「裁判所で養育費が決まっても支払わない別居親がいるが、裁判所の決定に反する行為を行った場合、罰則規定を設けることについてのどのように考えるか」を伺いました。
参考人は「非常に難しい問題であると考える。他方で、いかにサンクション(制裁)を確保するというのは非常に重要なので、どのような形で実効性を図るかについては民事だけではない形で図っていくことは十分に考えられる」と語りました。

熊谷参考人に「協議離婚の際には共同養育計画書策定の義務化により、確実な養育費の支払につながるとの考え方があるが、どのように認識されているか」を伺いました。
参考人は「共同養育計画があれば養育費の支払確保の上では有効であることは間違いないと思う」と語りました。

木村参考人に「面会交流(監護の分掌)の頻度を上げることにより養育費の確実な支払率が上がるとのデータがあるが、どのように認識されるか」を伺いました。
参考人は「養育費の確保の強化は非常に重要なことだと思うが、加害的な行為をした人と被害者が関わらなければいけないという状況も生まれてくる可能性がある。面会交流を増やせば養育費の支援率が上がるから面会交流を増やすという発想は非常に危険であり、養育費の支払と面会交流はきちんと分けて支払の確保をしなければいけないと思う」と語りました。
【参考人】
沖野 眞巳 氏 東京大学大学院政治学研究科教授
熊谷 信太郎 氏 弁護士
木村 草太 氏 東京都立大学教授
山崎 菊乃 氏 特定非営利活動法人女のスペース・おん代表理事

午後の質疑では
法制審議会家族法制部会委員であった水野参考人に「今回の改正案では、762条の2で祖父母に親子交流の申立権が付与されているが、どのようなケースを想定して書き込まれたのか」を伺いました。
参考人は「子どもの交流に関する審査の申立権者を基本的には父母だけに限っている。祖父母などの親族からの申立は、ほかに適当な手段がないときに限って認めることとしている。例えば、祖父母とずっと同居していてひどく強い愛着を持っているような場合に特に必要であると認められる場合があるのではないかということで書き込んでいる」と語りました。

浜田参考人に弁護士費用について「海外では離婚訴訟に成功報酬を認めない国もあり、一定の合理性があると思う。これに倣って日本でも成功報酬ではなく国が費用を負担するといったような形で最終的には移行させていくべきではないかと思うが如何か」と問いました。
参考人は「法テラスの民事法律扶助制度がありゼロとは言わないが、国費できちんとサポートする制度がもっと広がっていけば一層弁護士としても関与しやすくなるのではないかと期待する」と語りました。
【参考人】
水野 紀子 氏 白鷗大学教授
浜田 真樹 氏 浜田・木村法律事務所弁護士
鈴木 明子 氏 中央大学法学部兼任講師 共同養育支援法全国連絡会母の会アドバイザー兼共同責任者
熊上 崇 氏  和光大学現代人間学部心理教育学科教授